東京ミッドタウン日比谷の隣にマダムの聖地があった!:繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(1/3 ページ)
新たに開業した「東京ミッドタウン日比谷」によって、東京・日比谷は今にぎわいを見せている。世間の関心はこちらに集まっているが、筆者が注目しているのは、そのはす向かいにある施設だという……。
今、東京・日比谷は「東京ミッドタウン日比谷」の開業でにぎわっています。世間の関心はこちらに集まっていますが、私が注目しているのは、そのはす向かいにある施設。「日比谷シャンテ」です。ミッドタウンのニュースの陰に隠れて目立ちませんが、実は日比谷シャンテはこの3月に大幅リニューアルし、非常に魅力的かつ独自性のある施設として生まれ変わりました。
マダムの聖地、日比谷シャンテ。日比谷シャンテの店づくりから、これからの日本の商業施設の方向性を考えてみたいと思います。
30年ぶりに大改装した日比谷シャンテ
日比谷シャンテを訪れて驚くのは、店内を回遊するほとんどの客層が女性であること。そして年齢層は50〜60代が圧倒的に多いのです。入っているテナントのほとんどは50〜60代のマダム(ファッション業界ではミセスとハイミセスとも呼びます)向けショップばかり。カフェでくつろぐ方々もマダムばかりです。こんな場所が東京にあったのかと同施設を初めて訪れる人は驚くことでしょう。
日比谷シャンテは今から30年前の1987年に開業した施設です。シャンテ(Chanter)とは、フランス語で“歌う”という意味です。日比谷シャンテは旧日比谷映画劇場・有楽座の跡地に建設された「東宝日比谷ビル」内のショッピングモールというのが正式な位置付けです。
元々、日比谷シャンテは映画や演劇、宝塚歌劇を好む女性顧客が集まる場所として有名な施設でした。日比谷シャンテから皇居方面に向かうエリアは宝塚劇場、シアタークリエ、帝国劇場、日生劇場、国際フォーラムがあり、名実ともに日本一の劇場街です。ですから日比谷は全国からたくさんの女性たちがそれぞれの娯楽を目当てに集まってくる一大エンタテインメントタウンなのです。
その日比谷シャンテが開業以来、最大規模となるリニューアルをしました。17年秋から3期に分けてリニューアルを実施し、この3月に完成しました。17年度の日比谷シャンテの売上高は約55億円でしたが、リニューアルにより初年度で60億円を超える売上高を目指しています。
3段階でリニューアル
今回の大幅リニューアルは、日比谷シャンテと東京宝塚劇場の間の区道(136号)が歩行者専用道路へ生まれ変わることに伴ったものでもあります。第1弾は17年10月。東京宝塚劇場側の外観ファサードを変え、新たなテナント(セオリーリュクス、スワロフスキー、キハチカフェなど)を導入し、おしゃれなマダムをひき付けるデザインにリニューアルしました。
第2弾は17年12月。地下2階レストランフロアを全面リニューアルしました。東京の有名レストランやチェーン店の中でも比較的リーズナブルな新業態店を誘致して、マダムだけでなく周辺で働くキャリア女性も集め、開店とともににぎわっています。
そして第3弾が18年3月下旬。 全リニューアルが完成しました。1階の新広場、メインエントランス、新店舗、地下2階の東京メトロとの接続などによって、これまでの少し古臭い日比谷シャンテから、マダムのための新たな聖地である日比谷シャンテへと生まれ変わったのです。私から見ると、同施設のデザインイメージも、導入したテナント構成も、マダムのために考えられた施設になっています。
今、日本全国に3000を超えるSC(ショッピングセンター)があります。しかしそのほとんどはファミリーや若い人をターゲットにしていて、どこも似たような施設ばかりです。しかし、日比谷シャンテはマダムに特化しています。ここまで客層を絞り込んだ施設はほかに見当たりません。同施設のコンセプトを見ていくと、今後の日本の商業施設のあり方もイメージできます。
関連記事
- “おとなのパルコ“は上野・御徒町で成功するのか?
人気急上昇中のイースト東京エリア、その中心的な街とも言える上野・御徒町に新しい「パルコ」が11月4日にオープンしました。これまでのパルコと何が違うのか? 店づくりの特徴からこれからの消費トレンドを探ります。 - 日本でも変わりつつある食品スーパーの常識
日本の食品スーパーマーケット業界が転換期に差し掛かっています。今や単に食品を販売するだけでは消費者も物足りなくなり始め、新たな業態に変革しなければならない時代に突入しました。その切り口の1つが「グローサラント」です。どのようなものでしょうか? - ギンザ シックスが「規格外」である理由
東京・銀座6丁目にオープンしたばかりの「GINZA SIX(ギンザ シックス)」。さっそく大行列ができるなど、早くも人気の商業施設になりそうです。実はギンザ シックスにはほかの商業施設にはない特徴がいくつかあるのです。 - くるぶしオヤジの登場も近い? ファッションと働き方改革の関係
日本の暑い夏に働くビジネスパーソンの間で「クールビズ」という考え方はすっかり定着しました。そんな中でクールビズファッションはさらに進化し、くるぶしを出すスタイルが今注目されています。 - 新商業施設「中目黒高架下」の“新時代感”
11月22日、中目黒駅の高架下に新たな商業施設「中目黒高架下」がグランドオープンしました。このところ盛り上がりを見せている「ナカメ」に誕生したこのショッピングセンターは一体どんな特徴があるのでしょうか? - 小売業の未来を米ロボットレストランに見た
今、米国・サンフランシスコで人気のある、ビジネスマンなどにサラダを売るファストフード店をご存じでしょうか? 実は「ロボットレストラン」として話題を集めているのです。ここから日本の小売業の未来が見えてきました。 - ランドセルがじわじわと値上がりしている理由
平均単価は約5万円、中には15万円を超えるランドセルも。数年前から小学生向けランドセルの高価格化が進んでいます。そしてまた、値段が高くても売れているのです。その背景にはどのような消費トレンドがあるのでしょうか。 - 無名な店ばかりなのに、客が集まる商業施設が浅草にあった
消費者の目が厳しくなった今、単に安くて良いものが買えるというだけでは繁盛店にはなりません。そうした中、昨年12月に開業したばかりの東京・浅草の商業施設は、なぜ連日のように大勢の人たちで賑わっているのでしょうか。その理由を探ります。 - 年内に100店舗を計画 「相席屋」が事業を急拡大している理由
最近、繁華街で居酒屋チェーン「相席屋」の看板を見る機会が増えていないだろうか。2014年に1号店をオープンして以来、破竹の勢いで右肩上がりに売り上げや店舗数を伸ばしているのだ。さらには「マッチング」をキーワードに新たなサービスにも乗り出した。同社の取り組みに迫る。 - 本が売れない時代に本を置く異業種店が増えているのはなぜ?
出版不況が叫ばれて久しいですが、昨今、店に本を置くアパレルショップや雑貨屋、カフェなどが増えています。そして、それらは共通して繁盛しているというのです。その理由を探ります。 - 売上高53億円を超えた! 「オフィスグリコ」が成功した3つの理由
皆さんの会社には「オフィスグリコ」はあるだろうか? 江崎グリコがこのサービスを本格展開し始めてから十数年のうちに売上高は17倍以上の53億円に。その成功の秘密に迫った。 - “不毛時代”続いたカルビー「フルグラ」がなぜ急激に売れ出したのか?
カルビーが8期連続で過去最高益更新と絶好調だ。その業績を支える柱の1つがシリアル食品「フルグラ」である。この数年間で急成長を遂げており、2018年度ごろには500億円の年間売り上げを見込む。しかし以前は低迷期が長らく続いていた商品なのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.