東京ミッドタウン日比谷の隣にマダムの聖地があった!:繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(3/3 ページ)
新たに開業した「東京ミッドタウン日比谷」によって、東京・日比谷は今にぎわいを見せている。世間の関心はこちらに集まっているが、筆者が注目しているのは、そのはす向かいにある施設だという……。
50代以上の女性が主役の世の中に変わる
日比谷だからこその店ぞろえであり、宝塚歌劇場や映画館が回りにある日比谷シャンテだからそこまでの店づくりができたのでしょう、という見方ではこれからの日本の商業施設は間違った方向に行きます。日比谷シャンテのような取り組みは、他の商業施設にこそ必要な考え方だと言えます。
その最大の理由は人口構成の変化です。
これは20年の日本の年齢別人口構成グラフです。この推計によれば、全女性人口の50.4%が50代以上になるのです。このとき、男性の50代以上は45.5%。女性の50代以上が主役となる時代がすぐそこまできています。
これまでは20代のキャリアウーマンや、10代の女子高生、女子大生がトレンドを作ってきたのが日本でした。しかしこれからは50代女性がトレンドを作る時代に変わると私は思っています。その分岐点が20年です。
20年に50代以上女性が過半数になるのと同時に、50代以上女性の社会での存在感、発言力が増し、彼女たちに向けたメディアや情報が増え、消費の主役になるのではないでしょうか。従って、日比谷シャンテのように50〜60代マダムを大切にする店づくりは時流的に見ても正しく、これからますます支持される施設になると思うのです。
日比谷シャンテは全体で66店舗の都心にしては比較的小規模の商業施設です。5フロアありますが、1フロアの面積が小さいので歩きやすく見て回りやすい。適度に休むスペースがあり、フリーのソファ席には宝塚を思わせるデザインが施されていたりします。
店舗構成、店舗の内外装デザイン、雰囲気など、日比谷シャンテはマダムにとって、とても居心地の良い施設です。マダムにとっての居心地の良さは、実はあらゆる客層にとっても居心地が良いということもここに来ると分かります。
17年度の日比谷シャンテの来館者数は約300万人だったそうですが、今回のリニューアルと東京ミッドタウン日比谷の開業によって18年度は330万の来館者を目指しています。
日比谷シャンテの魅力に気付く女性が増えればさらに多くの来館者の集う繁盛施設になるのではないかと思っています。次の時代の商業施設のあり方を日比谷シャンテで学んでください。
著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
株式会社 船井総合研究所 上席コンサルタント
1969年、静岡市生まれ。ファッションを専門分野とした流通小売業界のコンサルティングのスペシャリスト。百貨店の営業戦略および全社MD戦略立案、GMSの売場再構築、大手メーカーの新規ブランド開発、SPA型小売業の事業戦略策定、中小専門店の現場支援コンサルティングなどを通じ、各業界で注目を集めるグレートカンパニーを数多く輩出させている。街歩きと店歩きによる消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。
関連記事
- “おとなのパルコ“は上野・御徒町で成功するのか?
人気急上昇中のイースト東京エリア、その中心的な街とも言える上野・御徒町に新しい「パルコ」が11月4日にオープンしました。これまでのパルコと何が違うのか? 店づくりの特徴からこれからの消費トレンドを探ります。 - 日本でも変わりつつある食品スーパーの常識
日本の食品スーパーマーケット業界が転換期に差し掛かっています。今や単に食品を販売するだけでは消費者も物足りなくなり始め、新たな業態に変革しなければならない時代に突入しました。その切り口の1つが「グローサラント」です。どのようなものでしょうか? - ギンザ シックスが「規格外」である理由
東京・銀座6丁目にオープンしたばかりの「GINZA SIX(ギンザ シックス)」。さっそく大行列ができるなど、早くも人気の商業施設になりそうです。実はギンザ シックスにはほかの商業施設にはない特徴がいくつかあるのです。 - くるぶしオヤジの登場も近い? ファッションと働き方改革の関係
日本の暑い夏に働くビジネスパーソンの間で「クールビズ」という考え方はすっかり定着しました。そんな中でクールビズファッションはさらに進化し、くるぶしを出すスタイルが今注目されています。 - 新商業施設「中目黒高架下」の“新時代感”
11月22日、中目黒駅の高架下に新たな商業施設「中目黒高架下」がグランドオープンしました。このところ盛り上がりを見せている「ナカメ」に誕生したこのショッピングセンターは一体どんな特徴があるのでしょうか? - 小売業の未来を米ロボットレストランに見た
今、米国・サンフランシスコで人気のある、ビジネスマンなどにサラダを売るファストフード店をご存じでしょうか? 実は「ロボットレストラン」として話題を集めているのです。ここから日本の小売業の未来が見えてきました。 - ランドセルがじわじわと値上がりしている理由
平均単価は約5万円、中には15万円を超えるランドセルも。数年前から小学生向けランドセルの高価格化が進んでいます。そしてまた、値段が高くても売れているのです。その背景にはどのような消費トレンドがあるのでしょうか。 - 無名な店ばかりなのに、客が集まる商業施設が浅草にあった
消費者の目が厳しくなった今、単に安くて良いものが買えるというだけでは繁盛店にはなりません。そうした中、昨年12月に開業したばかりの東京・浅草の商業施設は、なぜ連日のように大勢の人たちで賑わっているのでしょうか。その理由を探ります。 - 年内に100店舗を計画 「相席屋」が事業を急拡大している理由
最近、繁華街で居酒屋チェーン「相席屋」の看板を見る機会が増えていないだろうか。2014年に1号店をオープンして以来、破竹の勢いで右肩上がりに売り上げや店舗数を伸ばしているのだ。さらには「マッチング」をキーワードに新たなサービスにも乗り出した。同社の取り組みに迫る。 - 本が売れない時代に本を置く異業種店が増えているのはなぜ?
出版不況が叫ばれて久しいですが、昨今、店に本を置くアパレルショップや雑貨屋、カフェなどが増えています。そして、それらは共通して繁盛しているというのです。その理由を探ります。 - 売上高53億円を超えた! 「オフィスグリコ」が成功した3つの理由
皆さんの会社には「オフィスグリコ」はあるだろうか? 江崎グリコがこのサービスを本格展開し始めてから十数年のうちに売上高は17倍以上の53億円に。その成功の秘密に迫った。 - “不毛時代”続いたカルビー「フルグラ」がなぜ急激に売れ出したのか?
カルビーが8期連続で過去最高益更新と絶好調だ。その業績を支える柱の1つがシリアル食品「フルグラ」である。この数年間で急成長を遂げており、2018年度ごろには500億円の年間売り上げを見込む。しかし以前は低迷期が長らく続いていた商品なのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.