モンテローザ、焼酎割りのニュー飲料で狙う“ハイボールの次の座”:停滞する居酒屋のお酒に新ヒットを(2/3 ページ)
モンテローザが焼酎の卸や酒蔵と組んで焼酎割りの新ブランド「スパイダー」を売り込む。ハイボールの次のヒットが生まれない居酒屋業界と低迷が続く焼酎業界が手を組み若者にアピール。
若者離れを食い止めたい焼酎業界
モンテローザの担当者によると、居酒屋で売れ筋の主力を担うのはいまだにビール。ただ最近は法規制でメーカー側も安売りが難しくなり、店頭でも価格を下げづらくなっている。一方で人気商品に浮上したのがハイボールだ。大手メーカーのCM戦略やNHKの連続テレビ小説「マッサン」の影響でウイスキーがブームになり、ハイボールにもおしゃれなイメージが付いた。居酒屋にとってもハイボールは利益率が高く、優良な商品であり続けた。
ただ「長いことハイボールブームは続いてきたが、もはや伸びきってしまった状態。顧客は代わりの商品を探しているように思える」(モンテローザの担当者)。酒類メーカー側が新たな飲料のジャンルをなかなか打ち出せない中、顧客を飽きさせないため居酒屋自ら「ハイボールの次」のブランドを作り出すことにした。
そこで、商品開発では大量生産が可能で比較的安価な「甲類」と、価格は高めだが味わい深い「乙類」の両方の焼酎を混ぜた「乙甲混和」という珍しいタイプを採用した。両者の比率や原料にこだわり、乙類の味わいを生かしつつ安い甲類も使い手ごろな原価を維持することで、店舗の利益率を上げられるようにした。
さらに切実な事情からスパイダー開発に挑んだのが焼酎メーカー側だ。国税庁が発表した2016年度の国内の焼酎消費量は約83万900キロリットルと、ピークだった07年度より17.3%減少した。10数年前の高級焼酎ブームも今は昔、ルネサンス・プロジェクトの中村鉄哉社長は「焼酎の若者離れが特に深刻。新しいアルコール文化を提案して若い人にどう親しんでもらえるか考えた」と説明する。
そこでスパイダーでモンテローザと焼酎メーカー側が特に狙うのは20代の若者だ。モンテローザの担当者は「30〜40代はビールやハイボールを飲む習慣が定着していて“浮気”しなさそう。居酒屋にもっと来てほしいこの層にアピールしたい」と話す。
若者受けするため特に名称にこだわった。中村社長によると、既に「スカッチュウ」など10くらいの候補が上がっては消えていたという。ハイボールやチューハイを連想させるものが多かったが、モンテローザ側が「五臓六腑に染み渡り絡めとるイメージで」と発案したのがスパイダーだった。
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