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「3年で30万人」は絵空事か 就職氷河期世代の雇用対策に欠けた、深刻な視点:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
兵庫県宝塚市が実施した、就職氷河期世代対象の正規職員採用では、1635人が受験して4人が合格した。政府はこの世代を「3年で30万人」正規雇用することを掲げるが、どうやってそんなにも多くの人を救えるのか。最大の問題は低収入による“リソースの欠損”だ。
「不合格通知」をもらい続けている、就職氷河期世代
氷河期世代は「不合格」通知をもらい続けている世代です。
内定をもらうために日々奔走し、「内定もらえない人=負け組」という世間の冷たいまなざしに自信喪失し、運良く内定をもらえても契約社員。その後も、「中年フリーター」だの「中年パラサイト」だの「中年の引きこもり」だのとレッテルを貼られ続けてきました。
以前、フィールドインタビューさせていただいた男性は、6年間非正規採用で転々と中学校の教職を渡り歩き、30歳前で教師を諦めました。その後、中小企業に正社員として入社したのですが、リーマンショック後、業務縮小で大幅なリストラが実施され、職を失いました。
そんな“氷河”並みの冷たい風にさらされている彼らが、本当に正社員として「3年間で30万人」も雇用されるのか。どうやってそんなにも多くの人たちを救えるのか。現在のところ、
- 就職氷河期世代の就労を支援するため、Twitter公式アカウントや専用サイトを新たに開設
- 就職氷河期世代の就労支援を強化するため、東京労働局は、都内の2つのハローワークに独自の専用窓口を設置することを決定
- 就職氷河期世代の正規雇用を増やすため、厚生労働省が特例として、ハローワークでこの世代に限定した求人を認めたところ、1カ月余りで377件の求人が寄せられた
といった“動き”は報じられていますが、これでどうやって30万人もの人を正社員にするのか? 「3年で30万人」という数字が“絵に描いた餅”に見えて仕方がないのです。
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