カゴメが築く「ファンを夢中にさせる」戦略 わずか2.5%のユーザーに注目したワケ:新商品開発にも効果(4/4 ページ)
「野菜生活」などで知られるカゴメは、2015年に会員制コミュニティーサイト「&KAGOME」を開設。その背景には「少数のヘビーユーザーが売り上げを支えている」という特徴的な売り上げ構造がある。ファンとつながる取り組みによって、会社や事業に及ぼした影響とは?
顧客育成の“シナリオ”を描く
「&KAGOME」の取り組みによって、カゴメの収益を支えるユーザーとのつながりを深めてきたが、今後はよりライトな層の顧客への情報発信も工夫していく。水野氏は「カスタマージャーニーをどう描くか。それぞれの段階にいるお客さまの興味関心に応じてメディアを使い分けることが次の一手」と話す。
具体的には、カゴメの商品を購入したことがない、あるいは単発で購入するだけの顧客には、TwitterなどのSNSやマス媒体によるキャンペーンで接点をつくり、まずは認知してもらい、興味を持ってもらう。次の段階になると、LINEの公式アカウントを活用し、カゴメのコミュニティーにつなぎとめるような情報発信を行う。顧客の“育成シナリオ”を組み立てて実践し、「&KAGOME」の会員のように、「特別な関係になれる」(水野氏)人を増やしていきたいという。
また「&KAGOME」の運営によって、多様な顧客接点を持つことがブランドや商品への愛着につながることが分かったため、デジタル、リアルを問わず接点を増やしている。例えば、17年に野菜の豆知識やレシピなどを紹介するキュレーションメディア「VEGEDAY(べジデイ)」を開設するなど、野菜を中心とする取り組みの幅を広げている。
カゴメの取り組みによって分かるのは、ファンを増やすためにはまずファンをよく知ることが必要ということだ。顧客が自社の商品やブランドに何を求めているか、理解するための仕組みづくりが、商品開発や事業拡大の鍵になるかもしれない。
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