カゴメが築く「ファンを夢中にさせる」戦略 わずか2.5%のユーザーに注目したワケ:新商品開発にも効果(3/4 ページ)
「野菜生活」などで知られるカゴメは、2015年に会員制コミュニティーサイト「&KAGOME」を開設。その背景には「少数のヘビーユーザーが売り上げを支えている」という特徴的な売り上げ構造がある。ファンとつながる取り組みによって、会社や事業に及ぼした影響とは?
ファンの声から生まれた、チューブタイプのトマトソース
19年3月に新発売した「カゴメ 濃厚仕立てのトマトソース」は、ファンの声から生まれた商品だ。
従来は、缶容器の「カゴメ 基本のトマトソース」という商品を販売していた。この商品の改良が課題となったときに、開発担当者が「&KAGOME」に助けを求めた。会員から直接意見を聞く「座談会」を開催し、容器や使い方、味わいなどについてヒアリング。すると、「缶の容器だと少しずつ使うのが難しい」「いろんな使い方ができると良い」などという声があった。
そういった意見を反映し、新商品では容器を一新。少しずつ使えるチューブタイプにした。また、従来商品の約1.5倍のトマトを使用した濃厚な味わいにして、食材につけたりかけたりするだけでトマト味のメニューが簡単に作れる商品となった。
この事例のような、商品の意見を聞く「座談会」や、“カゴメらしさ”などについて語り合う「ファンミーティング」を、年に10回程度開催している。社内のさまざまな部署から「会員の意見を聞きたい」という要望も多いという。
また、17年2月末から「野菜生活」のCMの最後で流れている、「カゴメ、カ・ゴ・メ」というリズムが特徴的なサウンドロゴも、ファンの声から生まれた。16年9月に「&KAGOME」の会員に対して、「カゴメを音で表現すると?」と、イメージに関するアンケート調査を実施。その結果をもとに、3人の作曲家に作曲を依頼。作曲してもらった6曲の候補の中から人気投票を行った。その後、社内会議を経てサウンドロゴが決まった。ファンにとっては、「一緒にブランドを高めた」という貴重な経験だ。
「ファンと一緒に体験する」取り組みも継続的に実施している。2015〜18年は年1回の「工場見学会」を開催。19年は、新設した体験施設「カゴメ野菜生活ファーム」の体験会を実施した。トマトの収穫や試食を体験できる機会をつくり、一緒に楽しんだ。
関連記事
- ミニストップ「おにぎり100円」がもたらした“意外な変化”
ミニストップが7月に始めた「おにぎり100円」施策。主力商品のおにぎりを最大30円値下げした。開始から3カ月がたち、効果はどれほど出ているのか。また、“100円”という値決めは成功なのか。狙いや現状について聞くと、意外な変化も見えてきた。 - 2年目も売れ続ける「本麒麟」 ロングヒットの鍵を握る“2つの数字”とは
キリンビール「本麒麟」が2年目も売れ続けている。多くの失敗を経て“味”を追求したことが奏功。初年度の7割増で推移している。第3のビールの競争が激化する中でヒットした理由と今後の成長の鍵は? そこには、同社が重視する“2つの数字”がある。 - イチゴが近づいてくる! 農業を救うかもしれない「自動化」の現場を探る
農業の現場は高齢化や人材不足に陥っている。その解決に役立つと期待される技術が「自動化」だ。イチゴが動くことで収穫の作業負担を軽減する「イチゴ移動栽培装置」、経験がなくても適切な水やりができる「自然給水栽培装置」。この新しい技術を佐賀の現場で体感した。 - マーケティングは「無意識」を探る時代に ニューロサイエンスで検証した新商品の効果は?
アンケートやインタビューでは分からない「無意識」を脳波測定などによって可視化し、マーケティングに生かす動きが活発化している。ダイドードリンコはニールセン・カンパニーと共に、新開発の容器の効果を測定した。消費者の感情や記憶に訴える効果はあったのか。 - 注目の「カスタマージャーニーマップ」でユニクロを分析 “顧客視点の想像力”を鍛えよう!
顧客の価値体験プロセスを可視化する手法「カスタマージャーニーマップ」が注目されています。実際に作成してうまく活用するには、どうしたらいいのでしょうか。大手企業を分析しながら解説します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.