2015年7月27日以前の記事
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膨らむ経済損失と不満 世界で始まった「コロナ訴訟」世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

緊急事態宣言が5月末まで延長され、経済活動の停滞が続くことになった。米国などでは、中国政府に損害賠償請求の訴えを起こすケースが増えている。また、企業や大学までも訴えられた。不満がさらに高まれば、日本でもそのような動きが増えてくるかもしれない。

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 英公共放送BBCは、父親と叔母をあっという間に新型コロナで亡くし、母親は一人で隔離生活、自分も夫も感染してそれぞれ隔離生活をしている中年女性のインタビューを紹介。父親の葬儀もできない、家族みんなが感染し、誰にも怒りをぶつけようもなく、メディアで知ったフロリダの集団訴訟に加わったという。この女性は「中国共産党に対して、勝てなくても、何か説明責任を求めよう、何かを起こしたと思いたい」と語っていた。

 民間企業が訴訟に乗り出しているケースもある。例えば、イタリア北東部ドロミテのスキーリゾートでは、3月は予約でいっぱいだったが、ほぼキャンセルに。たまりかねて、運営会社が中国の衛生部を相手に損害賠償を求める訴えを起こしている。

 既出の米ネバダ州のケースでは、社員500人以下の中小企業などの代表者が訴訟に乗り出している。現在、米国では100万以上の小規模ビジネスやサービスが、大幅にビジネスの縮小や閉鎖を余儀なくされていると指摘。数千億ドル規模の損失になっているという。


米ネバダ州では中小企業などが中国政府を訴えている

スーパー、大学も訴訟の対象に

 訴えられているのは中国政府だけではない。興味深いのは、米NPO団体が、米テレビ局のFOXニュースを訴えたケースだ。訴えによれば、FOXニュースは20年2月から3月にかけて、新型コロナが「でっち上げである」という誤った情報を、十分な裏付けなく意図的に拡散させたと非難されている。

 また、感染した従業員に適切な対処をしなかったとして、米小売大手ウォルマートが従業員の家族から訴えられている。その従業員は勤務中に感染した可能性があり、体調不良で自宅待機して2日後に亡くなったという。しかも、そうした従業員の感染情報を内部で共有していなかった。こういうケースは、日本を含めどこの企業でも起き得るだろう。

 日本では冒頭のように、緊急事態宣言の延長で外出自粛要請が続くことになるが、米国でも各地で外出制限が実施されている。だがその措置に対して、市民が訴訟に乗り出している。アイダホ州では3人の住民が、外出自粛は宗教の自由を奪っていると指摘。州は、宗教行事を外出制限の例外にしたが、それでもまだ制限は残っていると原告側は訴えているという。

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