連載
誰も頼れず孤独死も…… 新型コロナがあぶり出す、家族と社会の“ひずみ”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/5 ページ)
新型コロナ感染拡大によって、孤独死の問題も表面化している。家族のカタチは大きく変わり、頼ることができる「家族」がいない人も増えている。一方で、日本社会は40年前の「家族による自助」を前提とした理念と仕組みを踏襲し続けている。
「家族」がいない人もたくさんいる
5月4日、緊急事態宣言の延長が決まったあとの記者会見で、安倍首相は「家族」という言葉を何度も繰り返しました。
「ゴールデンウイークには実家に帰省」「家族で旅行」「愛する家族の命を守る」「いつかきっと、また家族でどこかに出掛ける」「今は、どうかおうちで家族との時間、家族との会話を大切にしていただきたい」と。
しかしながら、家族がいない人がたくさんいるのです。帰省する実家もない、守りたい家族もいない、一緒に出掛ける家族もいない。ましてや苦しいときに「助けて」とSOSを出せる家族も、「連絡がつかない」と心配してくれる家族もいない。そういう人たちが今は圧倒的に増えているのに、なぜか見過ごされる。
今の日本社会の仕組みの土台は、高度成長期の「カタチ」を前提につくられたもので、1990年代を境に「家族のカタチ」は大きく変わったのに、その前提は踏襲され続けています。その結果、さまざまなリスクの不平等が生じています。
以下の図をご覧の通り、1980年の日本は「夫婦と未婚の子のみ」の世帯が全体の4割を占めていました。そのほとんどは会社員で妻は主婦、子供は2人。「単独世帯」は18.2%です。しかし、その後徐々に単独世帯が増え、2016年には26.9%となり、「夫婦と未婚の子のみ」(29.5%)に切迫。今後さらに増え、40年には単独世帯の割合は約40%に達すると予測されています。
関連記事
- 「もう、諦めるしかない」 中高年化する就職氷河期世代を追い込む“負の連鎖”
40歳前後になった「就職氷河期」世代に対する支援に、国を挙げて取り組むことを安倍首相が表明した。しかし、就職時の不況や非正規雇用の拡大など、さまざまな社会的要因によって追い詰められた人たちの問題は根が深い。実効性のある支援ができるのか。 - 賃金は減り、リストラが加速…… ミドル社員を脅かす「同一労働同一賃金」の新時代
2020年は「同一労働同一賃金」制度が始まる。一方、厚労省が示した「均衡待遇」という言葉からは、正社員の賃金が下がったり、中高年のリストラが加速したりする可能性も見える。そんな時代の変わり目には、私たち自身も働き方と向き合い続ける必要がある。 - 月13万円で生活できるか 賃金を上げられない日本企業が陥る悪循環
米フォードの創業者はかつて賃金を上げて生産性を高めた。現代の日本では、海外と比べて最低賃金は低いまま。普通の生活も困難な最低賃金レベルでの働き手は増えている。従業員が持つ「人の力」を最大限に活用するための賃金の適正化が急務だ。 - 「コロナ手当」を美談で済ませず見直すべき、非正規雇用の“当たり前”
新型コロナウイルスによって、医療や小売、物流などで働くエッセンシャルワーカーが理不尽な状況に陥っている。流通各社が従業員に一時金を出す動きが報じられているが、そもそも「非正規=低賃金でいいのか」という議論も進めるべきだ。当たり前を疑うことが求められている。 - “お上”の指示でやっと広がる時差通勤と、過重労働を招くフレックスタイム――ニッポン社会の限界
新型コロナウイルス感染拡大の不安が高まる中、テレワークや時差通勤を促進する行政機関や企業が増えてきた。通勤ラッシュのストレスを軽減する動きは広がってほしいが、日本人には「フレックスタイム」よりも「時差通勤」が必要ではないか。なぜなら……
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.