コロナ後の働き方? 「ジョブ型雇用」に潜む“コスト削減”の思惑:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(5/5 ページ)
コロナ禍で在宅勤務が広がり、「ジョブ型」雇用の導入に向けた動きが注目されている。しかし、時間ではなく成果で評価する「高プロ」制度は浸透していない。労働時間規制を免除できる制度を模索しているだけでは。それは「雇用する義務の放棄」でしかない。
再び「雇用する義務の放棄」を模索するのか
いずれにせよ、これまでも手を替え品を替え、政府も経団連も「労働時間規制の適用の免除」の実現を狙ってきました。それは「雇用する義務の放棄」でしかない。会社が会社である以上、雇用する人の健康を守る義務があり、その壁はどんな手を使おうとも早々崩されるものではありません。
よって、ジョブ型の雇用形態と耳ざわりのいい言葉で、再び「雇用する義務の放棄」をあれこれ模索することになるでしょうけど、高プロの二の舞になることは明白です。だいたい高プロでは、労働時間規制を外すことで企業側に求めた条件は、
- 「4週4日以上、年104日以上の休日確保」の義務
- 「労働時間の上限設定」「2週間連続の休日」「勤務間インターバル導入」「臨時の健康診断」から1つ以上の対策を労使間で選ぶ
の2点です。
これらは会社が人を雇用する以上、労働者の健康を確保するための最低限の基準です。……でも、それすら嫌なのです。
というわけで、労働基準法がある以上、ジョブ型雇用は広がらない。で、ここからは私の妄想ですが、きっと雇用義務を放棄できる「低賃金のフリーランス契約」が拡大するようになることでしょう。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)
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