訪日旅行者はいつ戻る? 東京五輪は? 「GoTo後の観光業」、復興への課題に迫る:都内のホテルは高値に(5/5 ページ)
全国の新規感染者数は2300人を超え、過去最多を更新し、先が不透明な旅行業界。「ポストGoToトラベル」が大きな課題となっている。日本と世界のコロナ感染対策の状況や違いなどについて、国際保健・医療政策のスペシャリストである慶應義塾大学 医療政策・管理学教室 特任助教の坂元晴香氏に取材した。
どうなる五輪? 日本の国際性が試される
以上が坂元氏への一問一答だ。来年の東京五輪会期中は、すでに都内のホテルは空きが少なく、カプセルホテルでさえ1万5000円越えの高値となっている。観光業の東京五輪への期待は大きく、開催の有無で収益にも大きな差が出ることは間違いない。感染症の状況や現在の渡航の緩和の動きから考えると、規模はさておき五輪開催を現実のものとして受け止め、試行が始まることも視野に入れたほうが良いだろう。
「東京五輪では、日本の国際性が試される」というのは 星野リゾートの星野佳路代表だ。コロナ禍では、感染拡大地域からの旅行自粛を求める声が知事などからも上がったのは記憶に新しい。だが星野代表は、政府主導での啓蒙活動を期待したいという。
「東京のお客さまはお断り、という張り紙をした飲食店などが、いまだに地方にいくとある。これは分断を生むし、同じように東京五輪で『海外の方はお断り』ということをすれば、間違いなく各国メディアに『差別』として報道され問題となる。
これはアフターコロナにおいても、日本のインバウンドに大きな影響となる。やるからには、海外からの選手や関係者を歓迎する、偏見を持たないということを徹底することが必要で、そういった準備を一刻も早く始めるべきだ」(星野代表)
コロナとの共存を考えるべき
『ニューノーマル』といわれ久しいが、これは元の生活に単に戻すのではなく、以前からあった社会の不具合を、これを機に変え、新しい世界を創造することだ。
先述の坂元氏は「コロナはしばらく無くならないと考え、共存していくことを真剣に考えるべきだ」といい、そうでないと新たな歪(ひづみ)が生じるという。
海外からの旅行者の受け入れが本格化するには議論も必要であり、時間も要することだろう。ただコロナへの警戒はしつつも、この時代に生きる覚悟をきめて、建設的に考え一歩を踏み出すことは、さまざまな分野で必要な時期にきているとも感じた。
著者プロフィール
村田和子(むらた・かずこ)
旅行ジャーナリスト。1969年生まれ、大阪市立大学生活科学部卒。アパレル会社人事部を経て、(株)人事測定研究所(現:リクルートマネージメントソリューションズ)へ入社。マーケティング業務に従事する傍ら、2001年より総合情報サイトAllAboutにて旅の情報の寄稿を開始。06年トラベルナレッジ設立し「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力発信・コンサル・講演を行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド🄬」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。総合旅行業務取扱管理者、1級販売士(日本販売協会登録講師)。16年よりNHKラジオ「Nらじ」へ出演中。
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