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3.11上回る25倍の電気代高騰、“市場連動契約"の落とし穴古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)

新電力の「市場連動型契約」に加入した世帯で電気料金が急増。ハチドリ電力では、電力価格の異常高騰分に関してはハチドリ電力側が肩代わりして負担し、ダイレクトパワーでは料金の割引に直接言及しなかったかわりに、2000円の解約手数料を無料とし、自社から顧客を切り替えるよう促している。

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「電力先物」活用がカギ

 電力のように価格が変動する商品(コモディティ)には、米や株式指数などと同じく「先物商品」が存在する。

 電気料金が高騰することが見込まれる場合は、将来の調達量と同じだけの先物ポジションをあらかじめ購入しておくことで、その価格上昇リスクを軽減することができる。しかし、電力先物は大手電力会社を含め、活用が進んでいないのが現状だ。

 東京商品取引所の電力先物(東エリア)と金の標準先物の出来高を比較すると、20年7月には電力先物が609枚で、金は37万4161枚と大幅に開きがある。電力会社は燃料費調達制度によって利用者に燃料費の上昇分を価格に転嫁しやすい。そのため、先物によって価格を固定するために追加のコストを支払うメリットは乏しいのだ。

 しかし、自社で発電設備を持たない新電力にとっては、急激な電力価格変動が死活問題となる。前出のハチドリ電力では、電力価格の異常高騰分に関してはハチドリ電力側が肩代わりして負担することを告知しているが、これにより「月に数千万円の赤字」が見込まれるという。その告知からわずか数日で電力卸売価格はさらに2.5倍になっており、今後も予断を許さない状況から考えると、その見込みをはるかに上回る損失が出ることは避けられないだろう。

 仮の話は空虚であるかもしれないが、もし各社が電力先物で買いヘッジできていれば、同社をはじめとした電力会社各社は、これほどまでの損失を被ることはなかっただろう。そして、ハチドリ電力のように「自腹を切る」ことをせず、消費者へ転嫁する電力会社にとっても、価格転嫁を抑制ないしは帳消しにできたはずだ。

 20年12月の東京商品取引所における「東エリアベースロード電力」の出来高は、前月比4.5倍の2295枚と急増しているが、それでもガソリン先物の半分程度だ。特に今年は経営状況を悪化させる電力会社が増加する可能性がある。電力業界において、先物をはじめとした金融派生商品の活用が急務となるだろう。

筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士

中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。

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