資生堂は復調傾向? 化粧品各社の「中国頼み」色濃く:メークからスキンケア需要へ(4/4 ページ)
新型コロナ禍で打撃を受けた化粧品業界が復調傾向にある一方、減収が続くケースもある。各社が直近で発表した四半期決算からは、各社の明暗を分けた3つのポイントが浮かび上がる。
海南島の優遇税制でトラベルリテール復調傾向
中国本土の売り上げの他、大きな影響を及ぼしたのが中国・海南島の免税店だ。20年7月に中国政府が設定した海南島における優遇税制は中国人客にも適用されるもので、海南島を離れる際の買い物の免税枠を1年あたり1人3万元(約45万円)から1人10万元(約153万円)へ大幅に引き上げた。
この影響で海南島免税への来客、出店ともに盛況。また海南島免税はオンライン購入が可能で、離島後180日以内なら利用できるなど買い物客が喜ぶ改正が進む。ロレアル、資生堂は海南島免税店によりトラベルリテールが復調傾向にある。
また今後の出店計画も続き、海南島免税で出遅れていた花王は4月からプレステージブランド「SENSAI」「エスト」、ファインファイバーテクノロジー(第二の皮膚)を活用した製品「バイオミメシスヴェール」を発売。ポーラ・オルビスHDも下半期に海南島免税店で複数の出店を予定する。
化粧品業界は新型コロナ以前からインバウンドを含む中国客の恩恵を大きく受けてきたが、この1年間はその割合が高まった。当面は中国市場での拡大が増収の要であり、各社の最重要課題となることは間違いない。ただし、中国依存といえる現状はリスクと隣り合わせでもある。
著者プロフィール
臼井杏奈(うすい あんな/ライター、編集者)
青山学院大学文学部卒業。産経新聞社の記者職を経て、ビューティー業界紙WWD BEAUTYで記者・編集職。2020年4月からフリーランス。中国や欧米などの海外市場やビューティーテック、スタートアップなどを中心に美容・ファッション関連の取材執筆を行う。
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