寮発祥のドーミーインが「大浴場」をどんどん展開するワケ 手掛ける「和風ビジネスホテル」とは?:瀧澤信秋「ホテルの深層」(2/5 ページ)
「宿泊施設のカテゴリーボーダーレス化」が進んでいるが、ドーミーインのサブブランド「御宿 野乃」もそのひとつだろう。
利用客層の多様化でビジネスホテルも多様化
ところで、宿泊施設としてなじみのある“ビジネスホテル”とはどのようなものを指すのか。駅近、リーズナブル、簡素、部屋が狭い、機能的……イメージは人それぞれであろうが、“ラグジュアリー”や“デラックス”とは一線を画す。これらのワードで想起するのは、ダイニングレストランや宴会、結婚式場など多くのサービスを展開するシティーホテルである。それに対してビジネスホテルは“宿泊に特化しているホテル”と一般的に解されている。
近年、ビジネスホテルの宿泊客は、従来のコアターゲットであった出張族をはじめとしたビジネス客から、ファミリーや観光客などにも拡大。宿泊需要の高まりから、差別化を計るべく各社が多様なコンセプトを有したホテルを生み出している。
そうしたホテルの中には、宿泊に特化しているものの、ラグジュアリー感やハイセンスなコンセプトなどを打ち出し、先に並べたビジネスホテルのイメージにはそぐわないところが増加している。とはいえ、宿泊に特化している=ビジネスホテルといわれることもあり、一部の事業者から困惑するという声や違和感を訴える苦言が呈されている。
これら“ビジネスホテルのイメージ問題”ついては別の機会に譲るとして、ドーミーインも天然温泉大浴場や旅館といった付加価値的なサービスを提供、コンセプト性も相当高いことが特徴だ。しかしながら、ドーミーインのある支配人はやはり「ビジネスホテル」と話す。
確かにドーミーインの公式サイトには「わが家の感覚のビジネスホテル」と記されている。観光客やファミリーにも支持され、そして出張族の味方でもある“身近な癒し”は、あくまでもビジネスホテルとするドーミーインのスタンスを物語っているかのようだ。そんなビジネスホテルの先端をいくようなドーミーインは、前述の通り共立メンテナンスの運営。同社は1979年の設立で、当初は学生寮や社員寮の運営を主幹事業としていたが、いまではビジネスホテル・リゾートホテルなど多く事業を手がけている。
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