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清水建設が仕掛ける「ニューノーマル時代のオフィス」 社員のタグから位置情報を可視化単なるコスト増か? 生産性向上か?(2/2 ページ)

大手ゼネコンの清水建設が、ニューノーマル時代の新たなオフィスの在り方を打ち出している。デジタル技術を活用して、リモートワークとコロナ禍に対応した、パフォーマンスの向上につながる「Shimz Creative Field」(シミズ・クリエイティブ・フィールド)を公開した。

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1分ごとの移動履歴

 もう一つの特徴は、このフロアでは社員の1分ごとの移動履歴データが蓄積されることだ。レイアウト図上で各ゾーンの使用頻度が分かり、頻度を勘案した効率的なレイアウト変更ができる。そうすれば、仕事のパフォーマンスが向上し、オフィスが進化する。また、コロナ下にあっては濃厚接触者の割り出しも瞬時にでき、働く場所の安全確保にもつながるのだ。

 また、位置情報システムと、清水建設が開発した建物OS「DX-Core」とを連動させて館内の設備制御をし、個人の所在や密度に合わせた空調・照明管理をすることによって快適な環境を提供しつつ省エネを図っている。さらに、順天堂大学の堀賢教授と共同開発した建物内の感染リスクを評価する手法によりリスク低減策を織り込み、常時の健康と非常時の安全を両立させたという。

 このフロアの空調は床下から新鮮な空気が上に向かって噴き出て、天井部分から排気する仕組みだ。個々の場所の在館者密度が高くなれば自動的に新鮮な空気が送られるよう自動制御できる。

初期費用とランニングコスト

 導入するにあたっての課題は、従来のオフィスと比べてどれだけ費用が増えるかだ。このシステムのキーとなる位置情報システムを導入した清水建設によると、オフィスの規模やシステムのカスタマイズのレベルによって異なってくるものの、今回の改修では1平米当たり約1万円コストが増したという。

 初期費用とランニングコストがあるため、オフィスの作り方によっては費用の掛かり方も異なるものの、安い金額ではない。となると、ビルオーナーがShimz Creative Fieldを導入するかどうかの決め手は、費用増に見合うだけのパフォーマンスをあげることができるかに掛かってくる。

 これまでオフィス内部やレイアウトに関しては、それほど費用を掛けないのが日本企業の通例だった。しかも、コロナ禍の長期化でリモートワークが進めば、わざわざ会社に来る必要性はますますなくなる。スマホとパソコンさえつながれば、どこで何をしていようが構わなくなる。

 現に多くの大企業で本社部門の縮小をはじめとしたオフィス縮小の動きが相次いで起きた。東京都心部のオフィスの賃貸料金も値下がり傾向が続いている。1年ほど前はコロナ禍が終わればオフィス需要は元に戻るといわれていたものの、リモートワークの流れはかなり定着しそうな雰囲気になってきた。


席が決まっていない改装後の設計本部の風景

出勤する魅力の再発見

 清水建設の提案は、こうした流れに逆らうものだ。本社に来れば対面コミュニケーションが取れ、快適に仕事ができる空間(ワークプレース)づくりを目指している。同社は現在、コロナ禍で出勤者を全体の3割に限定している。ただ本社に来れば、情報交換ができるなど目には見えないメリットがあるとみている社員が意外と多いのかもしれない。お金をかけたフロア改修により、本社に出勤する魅力を多くの社員があらためて確認できれば、Shimz Creative Fieldは成功したといえる。

 コロナ禍を見据えたオフィスとしては、パナソニックが2020年12月、withコロナ時代の安心感を追求した「worXlab(ワークスラボ)」を発表した。フロア全体に200以上のセンサーを設置し、位置情報、バイタルなどのヒトデータを軸に、空間の二酸化炭素濃度や湿度などの環境データ、機器の稼働状況などの設備データを取得・解析。設備運用へのフィードバックをすることによって効率的な施設管理・運営に活用できるとし、オフィスの改修需要を狙っている。

 清水建設の提案が果たして、この空間で働く社員のパフォーマンスをアップして文字通り創造的な仕事を生み出すことができるのか。ビルオーナーにどれくらい受け入れられるのかも含めて注目したい。


パナソニックが発表した「worXlab(ワークスラボ)」(リリースより)
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