水害被害を“リモート”で推測 小型衛星で日本進出したフィンランド「ICEYE」の可能性:世界初(2/5 ページ)
8月は豪雨による被害が多かったが、現地の被害状況把握に役立てられている新技術がある。フィンランドを拠点とする宇宙ベンチャー「ICEYE」は、自社で開発した小型人工衛星により地表を撮影、そのデータをもとにタイムリーな被害推定データを保険会社に提供している。
世界初! 小型SAR衛星の打ち上げに成功
アイサイは、フィンランドのアールト大学で人工衛星技術を研究していたRafal Modrzewski(ラファル・モドルゼフスキ)氏とPekka Laurila(ペッカ・ラウリラ)氏が、14年に共同創業した。天候に左右されず、夜でも地表を観測できる合成開口レーダー(SAR)の技術を使い、独自に小型のSAR衛星を開発。世界で初めて、1基の重さが100キログラム未満の小型化に成功したことで、注目されている。
「これは従来の10分の1程度の重さです。同時に1基の価格帯も、従来は100億円を超えていたところを20分の1以下まで削減しました。近年、各国のベンチャー企業を中心に人工衛星の小型化の技術革新が活発化していますが、その先駆けが当社でした」
同社には、大きく3つの事業の柱がある。1つは、自国で人工衛星を打ち上げることが難しい政府や政府機関に代わってSAR衛星を運用する運用代行ビジネス。2つ目は、SAR衛星で観測した撮影データを国防などの目的で政府に提供するデータ販売。最後は、民間企業向けに自然災害の被害状況把握を迅速化するソリューションの提供だ。
「18年にSAR衛星の1号基を打ち上げ、21年8月現在は14基まで拡大。この規模になると、地球上のほぼすべての地域を1日に1回以上の頻度で観測できます。これこそ当社の最大の強みです」
SAR衛星が撮影した画像は、妊婦健診のエコー画像のようにザラザラとしており、光学写真のような鮮明さはない。しかし、空が雲に覆われていても、山火事などで大量の煙が発生しても、真っ暗闇の深夜帯でも地表を観測できるメリットがある。
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