“中国依存”は大いなるリスク 日本の経営者が経済安全保障を重視しなければならない理由:サイバースパイが日本を破壊する【後編】(2/5 ページ)
岸田文雄新内閣では新たに「経済安全保障」を担当する閣僚ポストが新設される。経済安全保障の重要性を指摘してきたのが経済ジャーナリストの井上久男氏だ。後編では日本の経営者に求められる経済安全保障への対応を聞く。
経営者が注意すべき海外からの投資
井上氏は本書で、経済安全保障の視点から企業の経営者に警鐘を鳴らす。1989年にベルリンの壁が崩壊して以降、世界の市場が1つになって、いかにマーケットを効率的に取り込むかでグローバル企業の優劣が決まっていた。しかし、それから30年経(た)って状況は変わった。
「米国と中国という大国が対立するようになって、世界の市場は1つという考え方が通じなくなりました。世界にマーケットを取りに行くこと自体は否定できませんが、企業はサプライチェーンの中で部品や素材などを特定の1国に依存するのではなく、うまくデカップリング(切り離す)することが必要です」
さらにグローバルに展開している企業の場合、海外からの投資にも注意が必要だと井上氏は指摘する。
「海外から投資の話が来た場合、その会社の業務内容や実態を調べた方がいいでしょう。製造業や地方の中小企業であっても、自分たちの技術や部品が投資をしてきた企業の国で防衛技術に使われる可能性もあるからです。
『うちの会社の技術なんてそんなたいしたものではない』と思っていても、そういう技術が組み合わさって1つの装備品(武器)ができるかもしれません。自分たちの行動が経済安全保障に影響を与える可能性を、頭の片隅に入れておくべきです」
日本政府も経済安全保障に関する政策を進めている。10月4日に発足した岸田新内閣では、「経済安全保障」を担当する閣僚ポストを新設した。さらに、来年の通常国会では経済安全保障の定義を定めたり、銀行法や電気通信事業法といった各業法でも対応を求めたりする「経済安全保障一括法」の提案を目指しているという。井上氏は、公安調査庁が経済安全保障対策に力を入れていることを本書で明らかにし、長官にインタビューもしている。
「公安調査庁は大きく方針を変えました。これまでは破壊活動防止法や、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に基づいて、オウム真理教や国際テロの対応などに注力していました。それが、20年12月に長官が経団連で講演し、先端技術の流出リスクなどについて語るという変化が起きたのです。
公安調査庁はヒューミントと呼ばれる人を媒介した諜報活動をしているので、海外の企業や投資会社についていろいろな人脈を通じて情報を持っています。自分が取引している会社が本当に安全なのかと心配になった場合は、公安調査庁に相談に行くべきだと思います」
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