旭化成・小堀秀毅社長を直撃 事業分野を見直し、脱炭素に積極的に取り組む:旭化成・小堀秀毅社長を直撃【後編】(2/2 ページ)
多面的な事業展開をしてきた旭化成。その一方で、時代にそぐわない分野も出てきている。大胆な事業分野の見直しを断行すると同時に、企業の生命線になったカーボンニュートラルな社会実現のための事業には積極的に取り組む考えだ。小堀秀毅社長にインタビューした。
杭打ちデータ不正問題から学んだこと
――今までの職業人生で経験した一番の失敗は何ですか? それは、現在に生かされていますか。
失敗しても、間違っていれば潔く受け止めればいいのです。そこは朝令暮改でいいと思います。エレクトロニクス事業を任された時に、会社を買収した途端、リーマンショックによって、受注がどんどん減っていく事態を経験しました。事業にかかわっていた従業員に与えた大きな影響を考えると苦い思い出ですが、その時点でとれる最善の策として、後に撤退を決断しました。次に何をするかを考えることが重要と思います。
私は入社時から新しい樹脂のマーケティングや半導体事業の立ち上げなどを経験しました。若いうちに新規事業に携わったのは良い経験になりました。今までなかった分野を自ら白紙の中で開拓しなければなりません。目指すべき先輩もいなくて自ら取り組んでいかなければなりませんでした。
逆に言えば、若いながらもある程度勉強すればみんなが一人前に扱ってくれるということです。新規事業は成果もはっきり出るので人財の育成には重要です。そういうことに遭遇できたのはラッキーだったと思います。
――マネジメントをする上では役に立っていますか。
従業員には3つの「C」を実行してほしいと伝えています。まずは法令順守のコンプライアンス。これをしっかり守ってほしい。そして、高い目標を掲げて変化に対しチャレンジすること。そのためには外部とのコミュニケーションが重要だと話しています。技術の進歩が激しいので新しいことにチャレンジし、自ら変化を起こすことが極めて重要です。
――2015年に起きた関連会社の杭打ちデータ不正問題は、大きく報道されましたが。ここから何を学んでその後の経営にどのように生かされていますか。
社会からの信用なくして企業の存続はない。このことをあらためて従業員皆が感じて、コンプライアンスを徹底する必要性を認識したと思います。私もそれ以後、コンプライアンスの重要性を言い続けていますが、縦割りだけでなく、お互いにチェックする流れが見えてきていると思います。
――4万4000人を率いる経営者として、日ごろから心掛けている信条があれば、教えてください。
社会人として、経験の中から常に心掛けているのは、知識と行為が伴う「知行合一」です。別の言葉で言えば、有言実行で率先垂範ではないかと思います。自分が言ったことは行動で示さなければならないという覚悟が極めて重要だと思います。言ったことは必ずやって、背中を押す、襟を正してやることではないでしょうか。
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