アイリスオーヤマ大山晃弘社長を直撃 売上高1兆円の目標にはこだわらず安定成長へ:22年の展望(3/5 ページ)
アイリスオーヤマが、足元を固める安定成長に方向転換しようとしている。コロナ禍の影響などにより、部品の調達が当初予定した通りにいかなくなっていることなどが要因のようだ。22年以降の事業展開についてアイリスオーヤマの大山晃弘社長に聞いた。
人材獲得の行方
――21年4月にAIカメラ事業に新規参入しました。となるとセンサー技術など先端技術の開発も必要になると思います。今後は製品の使い勝手を良くするだけでなく、アイリスが業界に先駆けた新製品を出す考えはないですか。
全くのイノベーションというのは、当社にはまだ似つかわしくないと考えています。R&Dやテック系の分野に大きく投資するとか、先端分野で大きな研究所を作るとかいった具体案は考えていません。
先進技術を組み合わせて使いやすくすることは進めていて、例えば法人向けのAI連動型画像認識システムやAIサーマルカメラなどが挙げられます。基礎研究はパートナーと組んで力を入れますが、先端から一歩引いて、得意とする商品化を進めて、連携した会社とウイン・ウインの関係を続けていきたいと思います。
――家電分野は、大手家電の中途採用の技術者を活用してヒット商品を出してきましたが、事業規模が拡大する中で、今後の人材の獲得方法はどのようにしますか。
家電メーカーからの中途入社人材の採用は維持しつつも、外部からだけではいつかは限界が来ます。新卒も積極的に採用して、新卒・中途の両輪で人材を育成していきたいと考えています。
人材を育成するために、大阪に加えて新たに東京・蒲田に「東京R&Dセンター」を8月に開設しました。東京での技術者育成にも力を入れていきたいと思います。
中途で入社した人材に活躍してもらうために気を付けているのは、情報共有の徹底です。全社員にビジネスチャットツールSlackを21年から導入しました。国内、海外でもこのツールを活用して、コミュニケーションを強化しています。
――海外については天津工場が中国で10拠点目の工場として稼働しました。中国に依存している生産比率を下げる意向のようですが、その理由は何でしょうか。中国リスクをどのように見ていますか。
中国はマーケットとしてのポテンシャルがありますが、一方でカントリーリスクがあることも事実です。
リスクヘッジの意味で、東南アジア、国内、欧米に生産比率を少しずつ増やして、サプライチェーンを分散化していきたいと考えています。中国での生産比率は現在9割ほどあります。これをほかの地域での生産を伸ばすことで5割くらいまでに減らしていきたいのです。
いまはコロナ禍の影響で新規の工場投資をいったん停止しています。この生産シフトには時間がかかると思っています。
中国とは良好な関係を維持していて、進出して30年近くになります。中国全体の従業員は約4500人いますが、日本人の駐在は5〜6人で、幹部社員の多くは中国人で構成しています。これまでコロナ禍で1週間ほど工場が止まったことはありましたが、ストライキやボイコットといった大きなオペレーションの停止はありませんでした。
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