DXで飛躍する出光興産・木藤俊一社長を直撃 「昭和シェルとの経営統合」の効果は?:ブリヂストンからキーマンを招へい(2/4 ページ)
石油元売り大手の出光興産が、昭和シェル石油との経営統合によるシナジー効果とDXによって、脱炭素が求められる新時代で飛躍しようとしている。DX銘柄にも選定された。出光興産の木藤俊一社長に新しいエネルギー時代に求められる将来像を聞く。
昭和シェルとの経営統合 シナジーは?
――昭和シェルとの経営統合は交渉過程で紆余曲折がありました。いわゆる統合によるシナジー効果は出ていると言えるのでしょうか。
統合して2年半が経過しました。製油所間の留分の融通や調達、物流の合理化など、当初掲げていた物理的なシナジー効果の500億円はほぼ達成できました。肝心なのは、人の融合をいかに図るかでした。統合した会社の社員が出身母体を引きずったことでうまくいかなかった事例はいくつもあるので、いち早く出身母体にとらわれずに仕事をしてもらう環境づくりに注力しました。
ただ、出光興産固有の「大家族主義」「人間尊重」といった言葉を使うと、昭和シェル出身の社員にアレルギーを起こす恐れがありました。私はこれらを一切封印して、両社の共通の価値観は何かを考え、「人が中心の経営」ということだけを言い続けてきました。その後、社員自ら企業理念を成文化する機運が高まってきました。社員達が歴史を振り返って両社に共通する価値観について議論し、社員の声を何度も聞きながら成文化したのが「真に働く」という企業理念です。
驚いたのは、創業者の出光佐三が「第二の定款」の中で使ったこの言葉に行き着いたことです。現場からこうした社員の声を吸い上げてこの理念にたどりついたことで、人の融合も進んだと感じました。
――シェルのブランドが消えることに対して、旧昭和シェル社員から反発はなかったですか。
「シェル」のブランドはロイヤルダッチシェルから借りていて、契約上、一定の制約があります。経営統合してしばらくは「出光昭和シェル」というトレードネームを使っていましたが、23年には「シェル」ブランドの使用期限が来るので、どこかの時点で新しいブランドに統一せざるを得ないと考えていました。
そこでこの4月から「apollostation」という新ブランドに一本化することを決め、6300ほどあるガソリンスタンドのうち、2021年内に1700ほどの看板の架け替えが終わる見込みです。
旧出光興産では経営陣と社員が直接対話する機会は多くありませんでしたが、旧昭和シェルで開催されていたタウンホールミーティング等を参考に、年に4回社員との直接対話の機会を設けています。旧昭和シェルの社員の中には「シェル」ブランドに対する愛着がもちろんあると思いますが、対話の機会を通じてブランド統合の意義を理解してもらい、今は新ブランドの展開に全社一丸となって取り組んでいます。
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