「ロッテリア」はどこでしくじったのか 売却に至った3つの理由:ロッテも苦境(3/5 ページ)
「ロッテリア」のゼンショーHDへの売却が決まった。背景には大きく3つの要因が考えられる。他社の動向とともに考察する。
にもかかわらず、ロッテリアを売却するのはなぜか。理由は3つ。1つ目は、ロッテ本体の収益が悪化したこと。2つ目は、菓子ニーズが変化したこと。そして3つ目は、競合が多様であることだ。1つ目の「ロッテ本体の収益悪化」から見ていく。
ロッテ本体の収益悪化
私たちになじみのある「『お口の恋人』ロッテ」は、ロッテのほんの一部に過ぎない。ロッテHDは、「メリーチョコレート」や「銀座コージーコーナー」などの国内企業、そして「韓国ロッテグループ」(韓国ロッテ)を傘下に抱えている。
韓国ロッテは、流通・化学・建設業を中核事業とする巨大コングロマリット(複合企業)だ。韓国第5位の財閥でもある。売上高は5兆円超(21年度)とされている。これは日本のロッテ(ロッテ+ロッテリア)の売上合計の約20倍にあたる。韓国ロッテがロッテ全体に及ぼす影響は極めて大きい。
この韓国ロッテが、苦境に陥っている。21年3月期には1012億円の純損失(赤字)を計上。2022年3月期に2期ぶりに黒字化したものの、成長戦略の見直しは必至だ。
ロッテリア自体の赤字と相まって、ロッテ全体の収益が悪化したこと。それが今回の売却の理由の一つである。
菓子ニーズの変化「ガムからグミへ」
売却理由の2つ目は、菓子ニーズの変化である。例えば「ガム」だ。
「ガム」はロッテの祖業である。創業者の重光武雄氏が、戦後、進駐軍の米兵が噛んでいたチューインガムに着目し製造したのが、ロッテの始まりだ。
そのガム市場が縮小している。日本チューイングガム協会の統計によれば、ピーク時(04年)に1881億円だった売り上げ総額は、21年には755億円になったという。実に6割の減少だ。「お口の恋人」はガムからグミへ切り替わりつつある。
競合はすでに動いている。明治は2023年3月にガム市場「撤退」を発表。キシリッシュなどの販売を終了する。同時に「ヨーグレット」「ハイレモン」の製造委託先「明治産業」を丸紅に売却。売上好調の「果汁グミ」やキシリッシュの新グミブランド「キシリッシュグミクリスタルミント」などに資源を集中させる。
ロッテはガム市場で6割を占めると言われ、明治よりはるかに市場縮小のダメージが大きい。事業ポートフォリオの見直しとして、不調続きのロッテリア売却は止むを得ないだろう。
ハンバーガー店の難しさ
売却理由の3つ目は、ハンバーガーの競合の多様さだ。
かつて、菓子メーカーがハンバーガーチェーンを傘下に抱えていた時代があった。明治は「サンテオレ」、森永は「森永ラブ」、グリコは「グリコア」。だが、ロッテリアを除き、すべて撤退している。競合が多様すぎるからだ。
ハンバーガーチェーンの競合は同業他社だけではない。立ち食いそば・牛丼・カフェなど外食のみならず、コンビニやスーパーの弁当など中食にまで及ぶ。「副業」で戦えるほど甘くはないのだ。
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