海外売上が9割 電子楽器の雄・ローランドが狙う次の一手:初の直営店もオープン(1/3 ページ)
2022年に創業50年を迎えた、電子楽器の雄・ローランド。昨今では同社初となる直営店を、国内ではなく海外にオープンしたり、アコースティック楽器市場に進出するなど、新たな動きを見せている。ゴードン・レイゾン社長へのインタビューを実施し、同社のこれからの戦略を聞いた。
世界的大手の電子楽器メーカー、ローランド(浜松市)。2月には、前年に社長へ就任したゴードン・レイゾン氏のビジョンを盛り込んだ2023〜25年度の中期経営計画を発表した。計画には、新興国市場での新たな販売拡大や、直営店の展開で顧客接点を質・量の両面から向上させることなどが盛り込まれている。
同社は海外売上高比率が高く、22年12月期は全体の89.8%が海外市場によるものだった。そのうち北米市場が36.4%、欧州市場が27.6%を占める。こうした中、創業50周年を迎えた22年の8月には、同社初となる直営店をロンドンにオープン。同10月には米国のアコースティックドラム市場でトップシェアのドラム・ワークショップ(DW)社を買収するなど、勢いを増している。DW社を買収した狙いや、中期経営計画のポイントをレイゾン社長に聞いた。なお、別記事『和太鼓や管楽器を電子化!? 創業51年目のローランドが挑む音楽市場のゲームチェンジ』では、同社が「ゲームチェンジャー製品」として展開しているユニークな楽器群や、これまで音楽業界にもたらしてきたインパクトに関してまとめている。ぜひ、合わせて読んでほしい。
アコースティック楽器市場に参入した3つの理由
――社長に就任されて約1年が過ぎました。日々、社長としてどのような思いでローランド社の経営をしていますか。
ローランド社の歴史を振り返ると、最も大切なことは創造性だと考えています。創造性を発揮するためのマインドを会社全体として解放し、新しく挑戦することを恐れず、力を100%出し切ることが重要です。全社員が実力をしっかり発揮できるための自信を付けてもらい、方向を定めていくことが私の役割だと日々感じています。
――22年10月には、米国のアコースティックドラム市場で首位であるDW社を買収し、初めてアコースティック楽器市場に参入しました。その理由をお聞かせください。
これには3つの理由があります。
1つ目は、DW社がアコースティックと電子を組み合わせた次世代のハイブリッド・ドラム開発のための新技術を持っている点です。DW社の技術を生かすことで、当社が商品開発にかける時間を5〜6年ほど短縮できることを見通せました。
2つ目に、当社が得意な電子ドラムとDW社が強みを持つアコースティックドラムを掛け合わせたイノベーションが起こることで、ここ10年成長が止まっているアコースティックドラム市場全体が拡大するという両社の共通認識があったからです。3つ目は、ローランド社とDW社は企業文化や考え方が非常に似ていたという点です。
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