海外売上が9割 電子楽器の雄・ローランドが狙う次の一手:初の直営店もオープン(3/3 ページ)
2022年に創業50年を迎えた、電子楽器の雄・ローランド。昨今では同社初となる直営店を、国内ではなく海外にオープンしたり、アコースティック楽器市場に進出するなど、新たな動きを見せている。ゴードン・レイゾン社長へのインタビューを実施し、同社のこれからの戦略を聞いた。
――ローランドは既に楽器が好きな人、演奏する人にとっては高い認知度やブランドイメージがあると思います。一方で一般層への認知度向上についてはどのようにお考えでしょうか。
ビジョンの実現に向けて、既にブランドのファンである方だけではなく、さらに多くの方を取り込む必要があります。今、音楽を始めたくても、なかなかやり方が分からなかったり、不安を感じたりしている方も多いのではないのでしょうか。
そうした方が音楽を楽しめる世界に入るきっかけを提供するためには、店頭でのブランディングや新製品の営業といった小売店への働きかけだけではなく、例えばクラウドコンテンツやWebプラットフォームを充実させることなども一つの手です。こうしたさまざまな方法で、広くリーチをかけていきたいですね。
――楽器演奏のみならず、コンピュータを用いた音楽制作などの領域にも引き続き注力していく考えでしょうか。
端的に言えば、そうです。ただし、音楽は多様性にあふれており、ミュージシャン自身が自分たちの創造性に従って、進むべき方向を見つけ出していくのがあるべき姿です。その上で私たちの役割は、ミュージシャンに何かしらの公式を与えることではなく、クリエイティビティを最大限発揮できる環境を整えるという、あくまで補助的なものだと考えています。
音楽に触れることで日々のストレスが減りますし、幸せな気持ちになってより充実した生活ができるはずです。また音楽を「聴く」よりも「作る」ことで、そのメリットがより高められると考えています。
その点で、音楽の制作・表現・発信に取り組むことは社会的な責任があると強く感じています。もちろん企業として利益を出すことも必要ですが、利益の再投資を通して、数多くの人の挑戦を促し、ポテンシャルを最大限に発揮できるような状態を作りたいです。そうでなければビジネスに魅力がありませんから。
著者プロフィール
長濱良起(ながはま よしき)
沖縄県在住のフリーランス記者。音楽・エンタメから政治経済まで幅広く取材。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、沖縄県内各企業のスポンサードで2年間世界一周。その後、琉球新報に4年間在籍。
2018年、北京に語学留学。同年から個人事務所「XY STUDIO」代表。記者業の他にTVディレクターとしても活動。
著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)がある。
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