トヨタは佐藤社長体制で何がどう変わるのか:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)
佐藤恒治社長の新体制で初の方針説明会を実施したトヨタ自動車。「2026年までに10種の新EVを投入」が大きく報じられているが、それは大きな絵柄の中のごく一部にすぎない。説明会で語られたのは……。
今後どう変わっていくのか
ではどう変わっていくかの短期的見通しを示したのが図11で、先進国ではbZシリーズ、つまりBEVの性能を強化するとともにラインアップを拡大する。新興国では多様なニーズに対応して地域に応じたパワートレインを用意し、働くクルマのCO2を削減する次世代ピックアップトラックを発売。加えて都市内ニーズに対応するために電池容量を限定して、販売価格を下げた小型BEVをリリースしていく。
そしてさりげなくすごいことを言っているのが、その次の図12だ。左側のグレーの四角形と右側のそれを比べてほしい。これは台数を表しているので、つまり先進国では既存の台数をトータルで維持できるとトヨタは考えており、同時に新興国では台数を大幅に積み上げる予測でいる。こうした資料をつくる時、説明で言及こそしないものの、そういう数字的ファクトではうそをつかないように丁寧につくるのは当然のことだ。つまり、ここの部分のイメージは図を制作した人の頭の中にあることだと考えて良い。
ざっくりと見ると、先進国と新興国に含まれる水色のBEVの面積の合計は新興国の増加分より少ないが、BEVが売れた分、まるごと内燃機関付きモデルが減るという構図ではない。BEVの合計台数を過去の発表数字350万台と仮定するならば、おそらく100〜150万台程度内燃機関付きモデルが減って、350万台のBEVが加わることになる。
それが何を示しているかを読み取れるだろうか? トヨタは、従来のサプライヤーに内燃機関部品の大規模な縮小を求めず、販売増加した分についてBEVの部品生産に切り替えて行けば、現状の内燃機関付き車両の部品生産はほぼ規模を維持したまま行かれるルートを考えている。言い換えれば、550万人の雇用を維持しながら、トヨタ全体では、BEVの生産台数を大幅に増やしていく戦略を示しているのだ。
それが台数と営業利益に何をもたらすのかを描いているのが図13になる。こちらも全くさりげなく、というかバレないように「新興国の成長」の上に書かれている「HEVの台数・収益増」という言葉はまさに匂わせそのものだ。しかもそういうことができるのが「トヨタだからこその稼ぐ力」だと言うのである。もちろんそんなことが本当にできるかどうかは分からないが、彼らが描く絵図はそういうことを意味している。
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