就活オワハラ、なぜなくならない? 学生に「大人の圧力」振りかざす企業の苦しい事情とは:働き方の見取り図(3/4 ページ)
企業が就職活動をする学生に迫る「オワハラ」(就活終われハラスメント)が問題となっている。オワハラが社会問題として広く認知され、流行語大賞にノミネートされたのは2015年。それから8年の歳月を経てもなお、なぜオワハラはなくならないのか。
それは、オワハラを行った場合とそうでない場合とで、学生の立ち位置がどう変化するのかを確認してみると分かります。横軸をオワハラの有無、縦軸を学生の入社状況として分類し、パターン別にしたのが以下の表です。
オワハラで増幅する「退職予備軍」
オワハラを受けたために他社の選考を辞退して入社した学生は、自身の意思を曲げるよう強要されたことに対する会社への不信感や反発心を少なからず持つことになります。入社当初は割り切って仕事に打ち込もうと考え取り組んでみたとしても、仕事が思い通りに行かず壁にぶち当たったり、理不尽に感じる出来事に遭遇したりするたびに、入社前から備わっていた会社への不信感や反発心は増幅していきます。
その一方で、希少な若手人材は外部労働市場で重宝されるため、転職先が見つけやすい状況にあります。会社にとってそんな立ち位置にいる新卒社員は、いつ退職するか分からない「退職予備軍」です。「退職予備軍」の新卒社員が実際に退職することになれば、その欠員補充の採用に新たな労力と時間とコストをかけなければなりません。
「アンチ客予備軍」になる可能性も
それに対しオワハラを受けても入社しなかった学生は、それ以降会社との縁が切れます。しかしながら、オワハラを受けた学生の中には会社に対する悪印象が残り続けます。そして、会社の名前を目にするたびに、「採用選考の際にオワハラしてきたあの会社だ」という感情が蘇ることでしょう。そんな学生が、いつの日か顧客として関わる可能性が消えることはありません。オワハラを受けた学生は、その瞬間から「アンチ客予備軍」へと変わるのです。
学生が「アンチ客予備軍」になってしまえば、顧客創造のために営業やマーケティングなどの販促部門が費やしてきた労力と時間とコストがムダになります。同じような事態はオワハラした場合に限らず、採用担当者が面接時に横柄な態度を取ったり、不採用でも期日までに連絡すると言いながらすっぽかすなど、いい加減な対応をした場合などにも起こりえます。採用によって会社を助けているはずの人事部門が、実は会社の足を引っ張っているなんてことになるのです。
印象が良ければ「顧客予備軍」に
一方、オワハラを受けることなく入社した学生であれば、会社に対する悪印象はなく、自らの意思で働くことを選んでくれたので「相思相愛」です。入社した後も、気持ちよく働いてくれることが期待できます。また、オワハラもなく入社もしなかった学生とは縁が切れるものの、悪印象がなければ、いつの日か良き取引相手になるかもしれない「顧客予備軍」となります。
以上のように、採用担当者がオワハラすると会社にメリットがないどころか、オワハラしなければ生じなかったであろうたくさんのデメリットを生み出してしまいます。
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