ヤマハが「プール事業」から撤退、なぜ? 事業を始めたきっかけが面白い:経済の「雑学」(2/3 ページ)
「ヤマハ発動機がプール事業から撤退する」というニュースがありました。ヤマハ発動機といえば、バイクやボートをつくっているイメージがありますが、なぜプールを手掛けるようになったのでしょうか。歴史を振り返ってみると……。
飛行機に乗っていたら、ある光景が目に飛び込んできた
歴史をちょっとさかのぼると、1970年代まで学校のプールといえば「コンクリート製」が主流でした。「コンクリート=危ない」といったイメージがあるので、ヤマハ発動機はそこに目をつけて事業を始めたのね……といった話は半分当たっていて、半分違うといったところでしょうか。
1973年にオイルショックがあって、同社は主力事業のみでの存続が厳しくなりました。「なにかできないか」といった議論を重ねていくうちに、ボートやヨットで使っている素材「FRPを使って何かできないか」といった話になりました。
具体的に何を始めるのか。まだ決まっていない段階で、こんなエピソードがありました。経営陣の1人が海外へ出張していたときのこと。飛行機に乗っていたら、ある光景が目に飛び込んできました。それは、家のプール。「富裕層の人たちに、プールを提供できるかも」と考え、FRPを使ってプールをつくり始めることに。
このような話を聞くと、多くの読者は次のように感じられたかもしれません。「いやいやいや、プールがある家なんて、日本では少ないよ。で、売れたの?」と。実際、つくったものの、なかなか売れません。担当者は「このままではいけない」と悶々としていたところ、とある幼稚園の園長さんから声がかかりました。
当時、幼稚園で使われていたプールは、ビニール製が主流でした。その幼稚園でヤマハ製プールの導入が決まると、園長さんから「他の幼稚園にも話を持ち込めば、売れるのでは?」というアドバイスがあったそうで。この言葉を受けて、幼稚園を回ったところ、次々に売れていったそうです。
となると、次に目をつけるのは「小学校」。先ほど紹介したように、当時、小学校にあるプールといえば、コンクリート製。ザラついているので、ケガをする子どもたちが多かった。現場ではこのような不満を感じている人が多かったことから、FRPの安全性が評価されて、日本中の小学校でじわじわ広がっていったというわけです。
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