「営業から買う」は時代遅れ B2Bテック製品の購買ジャーニー、どう変化している?:ミレニアル世代が「メイン購入者」に(2/3 ページ)
B2B営業の購買ジャーニーが変化してきている。これまで当たり前だった「営業から買う」というスタイルはすでに時代遅れになりつつある。なぜだろうか? 購買者の変化を踏まえ、今後の営業のあり方を考えてみよう。
昔は「人」で買う、今は「製品」で買う
これまでのB2Bセールスにおいては、「取引してみないと分からないから」と営業の言葉を信じて購入していた。「製品についてはまだ理解してないけど、あなたが信頼できるから発注するよ」という営業現場は数多くあった。
「社長、私を信じて取引してください」も多くの営業の決め台詞だった。実際に、顧客が自分で調べようがないので、営業を信じる以外に方法がなかった。
そして時がたち、ミレニアル世代以降は営業を「一番信用していないチャネル」と位置付けている。営業担当を「肯定的な話しかしない」「ただ売りたいだけ」と疑っている。
その代わりに「無料トライアル」や「デモ」を重視している。製品は嘘をつけない。顧客が自分で触って、製品を確かめてみる。自身で触っていて分からないことのみ、営業に聞きたいと考えている。
製品をどう評価するべきかに関しても、営業の話を信じてはいない。営業の話を聞かず、「レビュー」を見る傾向がミレニアル世代は強い。海外のレビュー会社Trustpilotの調査によると10人中8人は購買前にレビューを見るという。 他の人がどう判断したのか、購入後の製品の感想を調べる。
米国や欧州ではB2Bの製品購入においてもレビューサイトの影響力が強まっている。日本においても、グーグルで製品名を調べれば、レビューサイトやグーグル自体であらゆる評判を調べられる環境に変わりつつある。これはB2B企業においても例外ではない。
そうすると、営業が顧客に一生懸命にプレゼンすることより、購買後に良い体験をしてもらってカスタマーサクセスを実現し、レビューを書いてもらうほうが、B2B取引における重要度が高いといえる。
価格に求められるのは「透明性と公平性」
価格のあり方も変わってきている。B2Bセールスにおいて、これまでは営業が見積もりを出してきた。時には「私が交渉しました」と特別値引きを強調して、顧客にクロージングを迫ることもあっただろう。
価格には秘匿性が高く、営業に聞かないと価格がいくらなのか分からないことが法人取引では多かった。だから営業の話を信用し、「君がそんなに言うなら、一番良いプランを契約するよ」と大盤振る舞いの発注もあった。
しかし、ミレニアル世代は価格も自分で調べたいと考えている。Webサイトに掲載されているなら、出来る限りWebサイト経由で価格を知りたい。価格見積もりに関しても、営業を介さずオンラインでやりたがる。フォームに必要事項を入力すれば自動ですぐに算出してほしい。必要のないプランや機能は発注したくない。価格に公平性と透明性を求めているのだ。
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