“限界集落”をグランピングで町おこし 売り上げが20倍超になった納得理由:人口400人(3/5 ページ)
岡山県津山市・阿波地区。人口400人ほどで、高齢化も進む地域に21年、グランピング施設がオープンした。一体なぜ、観光地でもないエリアにオープンしたのか。背景には、自治体ならではの課題があった。
人件費・広告費も自社の強みを生かして圧縮
もちろん、遊休施設や遊休地を活用して安く施設を立ち上げられても、他に解消すべきさまざまな課題が存在する。その一つが「人件費」だ。通常の宿泊施設以上に、グランピングは繁閑期の差が大きいとされる。それでも、人件費などの固定費を賄うために閑散期である冬季も営業する施設は多い。そうなると、防寒性に長けた高価なテントを導入する必要があり、価格に跳ね返ってしまう。
この点はダイブの強みが生きている。ダイブはもともと、観光施設に特化した人材サービスで成長してきた。30万人に上る人材データベースを基に、人手不足や繁閑期に合わせた人材確保といった観光業界特有の課題を解決するものだ。人材を固定的に保有せず、繁閑期に応じてアサインできることにより、閑散期はテント営業を休止して効率的な営業が可能になる。
また、宿泊施設は主に「じゃらんnet」や「楽天トラベル」といったサイトに掲載してもらうことで、認知拡大や予約受付を行う。しかし、こうしたサイトは手数料が発生し、当然施設の費用に跳ね返る。ダイブが手掛ける地方創生事業では、そもそも指名検索が少ないような非観光地が多い。そこで、自らグランピングに関する専門サイト「GLAMPICKS」を立ち上げて、施設情報や予約受付をD2C的に行うことで価格を抑えた。
こうしたさまざまな工夫により、ザランタンの各施設は1泊当たり1万〜1万7000円ほどとカジュアルな価格帯を実現した。
しかし、マーケットインで低価格のビジネスモデルを確立しながらも、ザランタンあば村の立ち上げ当初は苦しい状況が続いたという。
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