大阪・金剛バス、なぜ全線廃止に? 自治体の責任と運転手の過酷な勤務実態:宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(4/4 ページ)
大阪府の南東部を拠点とする「金剛バス」が全線廃止。背景には、自治体の責任と運転手の過酷な勤務実態がある……。
運転手の待遇見直しが急務
これから全国各地の路線バスは「赤字の補填」ではなく「再構築」が生き残る基準となっていくだろう。しかし、この制度をもってしても、運転手不足の切り札とはならない。なぜなら、根本的な不足の原因が「拘束時間の長い変則勤務・最大13連勤・給与水準はホワイトカラーの会社員以下」という、路線バス運転手の待遇が、そもそもの原因であるからだ。
労働条件に嫌気が差してトラックや観光バスの運転手に転職してしまったケースは、金剛バスに限らず後を絶たない。交通ネットワークの再構築を行うにしても、支援を行う形での待遇面の改善を織り込まないと、担い手不足で計画そのものが崩れてしまうだろう。
「再構築」に必要な人材が集まり、路線バスが生き残る必須条件を、シンプルに記したい。
「その町で結婚して、子育てができるレベルの給与水準・労働条件を出さないと、もうバス運転手は確保できない!」
この一点だけはムダと認識せず、国が主導して人材育成から取り組むくらいの動きを見せないと、路線バスは「2024年問題」も、その先も乗り切れないだろう。
宮武和多哉
バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。幅広く各種記事を執筆中。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護に現在進行形で対処中。
また「駅弁・郷土料理の再現料理人」として指原莉乃さん・高島政宏さんなどと共演したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」(既刊2巻・イカロス出版)など。23年夏には新しい著書を出版予定。
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