鍛え抜かれた防災組織
防災組織の編成にも抜かりがない。東京23区で震度5強を観測した場合、通常の業務体制から防災組織体制へと切り替えられる。さらに夜間や休日も迅速に対応できるよう、事業エリアの2.5キロ圏内に防災要員社宅をつくり、いざというときに動ける体制を構築。社宅などに住む防災社員は約240人いるという。
その内の約100人は、帰宅困難者の受け入れ対応を主とする「逃げ込める街班」の班員となり、日頃から帰宅困難者の受け入れ訓練を行っている。他にも、対策本部の事務局員、住宅支援、居住者支援の担当者などのさまざまな役割がある。
防災社員たちは定期的に特別訓練を実施する。年間6回ほど、多い時期は月に1回実施し、有事に備える。直近だと、24年は東京大学の廣井悠教授の研究室が公開した「帰宅困難者のシミュレーション」の内容を活用し、防災社員全員を対象に帰宅困難者の対応訓練を実施した。「逃げ込める街班」だけでなく、他の班員にも帰宅困難者の対応の流れを理解してもらうことが目的だ。その他にもさまざまな訓練を行っており、防災訓練に費やす時間はかなり多いという。
今後はどのように考えているのか。細田氏は「ITテクノロジーは進化し続け、導入したシステムにも寿命があるため、常に修正とアップデートを行う必要があると考えている。加えて、社会的要求も変わるため、付随して出てくる新たな問題にも対応しなければならない」と答えた。
いつ何が起こるか分からない自然災害。日々の備えを考え、定期的な訓練を行わなければいざというときに動くことはできない。森ビルのような企業が管轄するエリアならリスクは軽減されるかもしれないが、そんなエリアは限定的だ。企業も個人も、自分たちにできるBCP対策を考え、備えておかなければならない。
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