東日本大震災では1100世帯分の電力を供給
電力の自立化と強靭化にも一層力を入れた。東日本大震災が発生した当時建設中だった虎ノ門ヒルズ森タワーとアークヒルズ仙石山森タワーにて、急きょ設計変更を決定。都市(中圧)ガスによる、非常用発電システムを設置することになった。非常時でも想定最大使用電力の約85%の供給を可能とする。
システムに使用するガスは地下に配管が張り巡らされている。配管自体も非常に強いといわれているため、供給が途切れる可能性は低い。だがどんなときでも絶対はないため、さらなる備えとして発電に使えるオイルを3日分備蓄する。オイルでの発電となると供給できる場所が限られるが、最低限の設備や非常用のエレベーターを動かすことができる。
同社はこうした都市(中圧)ガスによる非常用発電システムを導入する以前から、独自のエネルギープラントによる安定的な電力供給システムを既に構築している。実際、東日本大震災が起こった際、六本木ヒルズで自家発電した電力(一般家庭約1100世帯分の消費電力)を東京電力に送っており、一時的とはいえ発電所の役割を担っていた。
「六本木ヒルズは特に大きな発電設備を設けており、大きな地震が起きても普段と変わらないくらいの電力を供給できる状態です」(細田さん)
東日本大震災当時、六本木ヒルズも震度5弱の揺れを観測していたが、自社設備のおかげで停電は起きず、入居していた企業にも影響はなかったという。グローバルなブランドが入っている施設では、停電が発生すると世界的な影響を及ぼす可能性すらある。電力の供給は欠かせない。
もちろん、こうした企業のBCPを支えるためには、当然だが電力だけでなく建物自体も強靭でなくてはならない。同社が手掛けるビルには、震度6や7の地震が起こっても構造的な被害を少なくするため、ダンパーなどのさまざまな制振装置を取り付けている。
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