北陸新幹線・敦賀延伸 迫る「対東京シフト」の大転換:宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(3/3 ページ)
2024年3月16日に北陸新幹線・金沢駅〜敦賀駅間が延伸開業する。新しい新幹線は、これまでの観光の需要に加えて、ビジネスでの出張移動なども期待されている。敦賀延伸で、福井県のビジネスパーソンの移動に変化が起き、さらに対首都圏シフトが進むのだろうか。
北陸新幹線延伸 今後の課題
しかし、今後の課題は「共存してきた飛行機との再度の競争」だ。北陸新幹線の敦賀延伸によって、福井県内のほぼ全域を北陸新幹線が抑えてしまう上に、15年の金沢開業の際には対応できていなかった「十分な利用者用駐車場」「移動中のWi-Fi」などをしっかりと確保。また、福井県から対首都圏へのダイナミックレールパック(ダイナミックパッケージにあたる旅行商品)も、24年2月に販売を開始した。新幹線のネットワークが九州・北海道などに広がるにつれて、JRや沿線自治体も、今どきの利用者の傾向に合わせ始めている。
北陸の各企業もコロナ禍を経て海外出張の機会が減っており、その傾向は戻っていない。各社ともすでに、新幹線での出張を「どうしても飛行機で!」とする理由が薄れ始めている。
この状況の中で、福井県・石川県が対首都圏の交通機関として、両睨みで新幹線・飛行機を推せるかは要注目だ。そして、新幹線の金沢延伸後も何とか羽田便を維持し続けてきたANA・JALが踏みとどまるのか、という課題も残る。
また根本的な課題として「そもそも新幹線が大阪につながっておらず、見通しも立っていない」ことがある。金沢駅〜敦賀駅間の需要予測は首都圏、関西圏ともに増加する見込みで試算されている。新幹線による時間短縮効果で最低でも堅持、できれば利用者増加に持ち込まないと、今後の延伸計画に響いてしまう。
関西方面への移動がやや不便になる上に、出張先となる企業の首都圏集中、関西企業の存在低下も続いている。一方で対首都圏の移動需要は、飛行機・在来線特急などさまざまな形ですでに築かれており、今回の金沢駅〜敦賀駅間延伸が「北陸の対首都圏シフト強化」という、北陸のビジネスシーンの転換点となるだろう。
新幹線が開業したからといって、ビジネス上の習慣となっている出張の手段がすぐに変わるまでには相当な期間を要する。北陸新幹線だけでなく、この地の飛行機、高速バス、在来線などがどう変化していくのか。新たな新幹線の開業を祝しつつ、それぞれの様子を見守りたい。
宮武和多哉
バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。幅広く各種記事を執筆中。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護に現在進行形で対処中。
また「駅弁・郷土料理の再現料理人」として指原莉乃さん・高島政宏さんなどと共演したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」(既刊2巻・イカロス出版)など。23年夏には新しい著書を出版予定。
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