70億円の赤字想定 北陸新幹線・延伸ともに爆誕した「ハピラインふくい」の今後を占う:宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(4/4 ページ)
2024年3月16日、新しい鉄道会社「ハピラインふくい」の路線が開業した。ハピラインふくいの今後の経営環境は、課題が山積している。期待と不安が入り交じるハピラインふくいの今後を探りつつ、北陸3県ごとの第三セクター鉄道の課題についても整理してみよう。
「ワンチーム作戦」で攻める「あいの風とやま鉄道」
富山県内の北陸本線区間(泊駅〜富山駅〜倶利伽羅駅間)の移管を受けた「あいの風とやま鉄道」は、22年度以降は基金からの補助を年間1億〜2億円受けつつ、赤字・黒字のはざまをさまよっている。
同社のエリアは今回の北陸新幹線・延伸エリアではなく、そこまで影響を受けることはない。ただ、富山県は県内のJR路線(氷見線・城端線)の移管を受け、29年をめどにあいの風とやま鉄道での運営を提案。すでに合意に至るなど、独自の動きを見せている。
富山県はこれまで、JR富山港線の「富山ライトレール」移管・LRT化(04年)、富山ライトレール・富山地方鉄道の合併と直通運転開始(20年)、そしてあいの風とやま鉄道の増便・快速設定による乗客増加(2020年以降はコロナ禍で減少)など、県が主導・出資を行うことで、鉄道の経営効率を改善させてきた実績がある。
そして城端線・氷見線も、課題であった旧型車両の更新(製造から40年を超えるキハ40系が主力)や増便・高速化を行う意向を富山県が示し、JR西日本は各種協力を行いつつ、150億円の拠出を行うことを明らかにしている。いわば、富山県側にとっては「自前運営で効率化+サービス向上・赤字幅縮小」、JR西日本としては「“手切れ金”によるローカル線の損切りと、富山県との関係維持」という、ウィンウィンの関係を築いているといえるだろう。
なお、新田八朗・富山県知事は、県内の鉄道を一体となって救済する「ワンチームとやま」政策を掲げており、富山地方鉄道の鉄道線3路線の上下分離(線路・鉄道設備などを県などが保有し、税金負担などを軽減する)への検討も進めている。
富山県と富山市の動きからは、あいの風とやま鉄道、JR城端線・氷見線、富山地方鉄道を合わせて、県・自治体の自前でワンチームで経営していく強い意志が感じられる。鉄道経営へのビジョンを示し、必要な補助金や拠出を受け取って地域で汗をかく、という在り方は、国土交通省がいま進めている「再構築協議会」を、富山県が自前で積極的に進め、国・JRともうまく関係を維持しているようなものだ。
現在、再構築協議会では「JRが数億円の赤字をかぶって当たり前」「廃止反対はするが、かわって運営はしない、金も出さない」と、話し合いのテーブルにすらつかない某自治体もある。どことは言わないが、その姿勢とついつい比べてしまう。
3県3セク+北陸新幹線 どう連携していく?
こうしてみると、3県の鉄道会社は、それぞれの意思と思惑をもって動いていることが伺える。
【富山県・あいの風とやま鉄道】
ワンチーム自前運営、増便・利便性改善の主導権を握りたい
【石川県・IRいしかわ鉄道】
赤字転落を最小限にとどめ、将来的な値上げのプロセスを作りたい
【福井県・ハピラインふくい】
まず、会社として稼げるサービスの構築!
110年の歴史を誇るJR北陸本線を受け継いだ3社は、北陸新幹線と共存共栄・連携しつつ、どこまで鉄道としての役割を果たしていけるのか。あらたに県民鉄道としてスタートを切ったハピラインふくいの動向は、3県の第三セクター鉄道の今後を占う意味でも、目が離せない。
宮武和多哉
バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。幅広く各種記事を執筆中。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護に現在進行形で対処中。
また「駅弁・郷土料理の再現料理人」として指原莉乃さん・高島政宏さんなどと共演したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」(既刊2巻・イカロス出版)など。23年夏には新しい著書を出版予定。
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