令和になっても「パワハラが引き起こす悲しい事件」が減らない、4つの理由:働き方の「今」を知る(2/4 ページ)
パワハラが引き起こす悲しい事件がたびたび報道される。実際、厚生労働省の発表によるとパワハラ相談件数は年々増加している。組織を取り巻く課題を4つに分けて考察する。
いまだにパワハラがなくならない理由とは
これほどまでにパワハラが問題視され、防止措置を義務化する法律まで制定されているにも関わらず、パワハラ被害は減るどころか増加している。では、なぜパワハラはなくならないのだろうか。筆者に寄せられた被害相談やトラブル解決依頼のケースは、大きく4つの理由に分類できる。それぞれについて説明していこう。
(1)加害者、被害者ともに、何がパワハラに該当するのか知らない
ハラスメントについて教わった機会がなく「そもそもどんな言動や行動がハラスメントに当たるのかを知らない」のであれば、加害者も被害者もいつまでも無自覚のままだろう。
また、「パワハラ=問題行為」程度までは認識している人が多いだろうが「悪質な場合は刑事罰を受け、損害賠償が発生し、加害者のみならず組織の評判を大きく低下させるリスクがある」というところまではまだまだ自分ごととして認識できていないのではないだろうか。
<参照>厚生労働省におけるパワハラの定義
同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為
「たまに厳しい言葉を使うこともあるが、あくまで指導の一環だ! 断じてパワハラではない!」と言い切る人もいるが、それが正当な理由がある叱責の場合であっても「大声で怒鳴りつける」「多数の面前での見せしめ・懲罰的な公開叱責」など、方法を間違えば違法性が生じることを忘れてはいけない。
ちなみに、殴る・蹴るなど身体的な攻撃をした場合、刑事事件として「傷害罪」(刑法204条)や「暴行罪」(刑法208条)が成立する可能性がある。最高刑は懲役15年だ。
言葉だけの場合でも「殺すぞ!」「契約とれるまで帰ってくるな!」「目標未達ならボーナスゼロだ!」といったように相手を畏怖させることを言えば「脅迫罪」(刑法222条)、「前の会社は○○で辞めたくせに!」とか「不倫をバラすぞ!」などと公然と具体的な事実を示して相手の名誉を傷つけたら「名誉毀損罪」(刑法230条)だ。
その場合、事実が嘘か本当であるかは関係ない。そして、事実を示さずとも「バカ!」「給料泥棒!」「ダメ社員!」などと公然と汚い言葉でののしった場合は「侮辱罪」(刑法231条)が該当する可能性がある。
その他にも民事上では「会社が職場環境を整える義務を果たさなかった」ということで「職場環境配慮義務違反」、そして「使用者責任」を問われ、損害賠償を請求されることもあるのだ。
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