サンリオはなぜ強い? 「かわいい」だけじゃない、ファン作りの3つの極意:令和の無駄学(2/3 ページ)
近年は大人でもかわいいキャラクターに「思わずハマってしまった」「推しキャラがいる」という人は珍しくありません。しかしなじみがない方は「大人なのに、かわいいキャラクター?」「なんであんなに夢中になるの?」「無駄じゃない?」――そんな風に思ってしまうこともあるのではないでしょうか。かわいいキャラクター業界をけん引する企業、サンリオでプロデューサーを務める池内慎一朗さんに、消費者を夢中にさせる、その裏側にある仕掛けについてお聞きしました。
「キャラクターコラボ」を成功させるポイント
筆者: コラボというお話も出ましたが、サンリオさんのようなかわいいキャラクターとコラボしたい、でも何から考えたら良いか分からない、という方もいらっしゃると思います。どういうことから考えると良いのかポイントなどはあるでしょうか。
池内氏: キャラクターのファンがもつ「共感性」と、企業の顧客がもつ「共感性」。 まずは、その交わるところが何かを意識するのが良いのかなと思います。
先ほども少しお話したNEXT KAWAII PROJECTから生まれた「はなまるおばけ」というキャラクターがいます。例えばこのキャラクターで考えてみると、はなまるおばけは、努力して報われても報われなくても、がんばったみんなに“はなまる”をあげる。”――そういうことを伝えている存在なんですけど、そんなキャラクターの存在に癒されているファンがいる。そして、ほっと一息つきたい人や、頑張って帰ってきた人に向けた、ホットコーヒーみたいな商品があったとすると、それは共感性が分かりやすく重なりますよね。タイアップすることで企業が伝えたい思いが、はなまるおばけを通してより伝わるんじゃないかなと思います。
2つの共感性が交わるところで喜ぶのはどんな方なのか。当たり前の話ではあるのですが、やっぱり見るべきはファンや顧客の方々ですので、そこを中心に考えていくのが良いのかなと思っています。
筆者: はなまるおばけもまさにそうですが、キャラづくりや接点づくりが現代ならではのものになっているようにも思います。一口に「かわいい」といっても、それは時代によって変わっているということなのでしょうか。
池内氏: そうですね。かわいいキャラクターにも、ファッションなどと同じように、やっぱり流行とかトレンドというものはあるように思います。キャラクター業界としても、求められているものは時代によってすごく変わってきているんじゃないかなと感じますね。
筆者: ニーズが変わるなかで、どのように愛され続けるのか……。ここにもなにかポイントがありそうですね。
池内氏: サンリオのキャラクターたちは「常にそばにいる存在」だという特徴がありますが、メディアや楽しみ方が変わるその時代に合わせて、寄り添い方もデザインして変化できた点が、長らく愛されている理由の一つなのかなと思いますね。
筆者: 時代に合わせて変化しながらも寄り添い続けられる、というのは先の話にもあった「余白」があるというのが大きいのでしょうか。
池内氏 :そうですね、そう思います。
筆者: その余白について、どこまで決める決めないというのは考えるのが難しいのではないかと、少し疑問に思うのですが……。
池内氏: キャラクターのコンセプトや余白をどうつくるか、戦略的にやっていくというのは、まさに2年前に発足した私たちIP創造部、プロデューサーの大きな仕事の一つです。
サンリオでは、従来はグッズから発信というのが中心でしたから、キャラクター設定や世界観の決定、そしてプロデュースも、大きくはキャラクターデザイナーが担っていたんです。
しかし、今はグッズだけでなく、楽しまれ方も複雑に多様化している。ニーズにお応えして幅を広げていかなければいけない。そこで、プロデューサーがキャラクターのもつ共感性、世界観をどう生かすか、その先をどう見据えるかなど、俯瞰しながらキャラクター育成を考えるようになっています。魂を込めるデザイナー、どのように好きになってもらえるか考えるプロデューサーの両輪で動いていくようになっているんです。
筆者: サンリオさんの中でも、ある種時代に合わせてプロデュースの仕方が変化しているんですね。
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