オムロン、資生堂も……増える「黒字リストラ」 働き手には“チャンス”なのか?(1/3 ページ)
2024年に入り、早期退職者を募集する企業が増えている。人員整理はネガティブなイメージ一色だったが、今は人員整理を行う企業にかつてほどの悲壮感は感じられない。「リストラ」のイメージが以前よりネガティブでなくなったのはなぜなのか、それは働く人にとって本当にチャンスなのか、考えてみたい。
2024年に入り、早期退職者を募集する企業が増えている。特に目立つのが大企業で、コニカミノルタが国内外で2400人、国内だけでも資生堂は1500人、オムロンは1000人という大規模な募集を発表した。
過去のバブル崩壊やリーマン・ショック後にも「リストラ」と称する人員整理が盛んに行われた。当時はリストラされた本人や家族が自殺……という話も聞こえてくるなど、人員整理はネガティブなイメージ一色だった。
しかし今は、人員整理を行う企業にかつてほどの悲壮感は感じられない。社員の側は悲喜こもごもだろうが、キャリアチェンジのチャンスと捉えて手を挙げる人も増えていると聞く。
「リストラ」のイメージが以前よりネガティブでなくなったのはなぜなのか、それは働く人にとって本当にチャンスなのか、考えてみたい。
増える「黒字リストラ」
東京商工リサーチによれば、リーマン・ショック直後の2009年は上場企業191社が早期退職募集を行っている。非上場企業も含めればもっと多くの会社が実施したであろう。
その後は減少傾向にあったが、コロナ禍の2020年に急増。2021年、2022年は再び減少したが、2023年からまた増加してきている。
注目すべきは2024年の立ち上がりで、6月末までで前年の9割に迫る36社、人数では前年を超える5364人となっている。このペースでいくと年間1万人を超えることになる。退職を迫られる会社員が2009年の半数近くにのぼる可能性があるのだ。
ただ、バブル崩壊後やリーマン・ショック後のリストラが「業績悪化でやむにやまれず」というものだったのに対し、今はそこまで崖っぷちでない状況での、いわゆる「黒字リストラ」が増えている。
同じく東京商工リサーチの調査では、2024年上半期に早期退職募集をした上場企業の約6割は直近の通期決算で黒字だった。
円安、物価高に加え、賃上げの圧力も強まる中でなんとかコストを削減したい、変化する世の中での生き残りをかけて新たなビジネスを軌道に乗せたい、といった事情が「まだ余力があるうちに事業を整理し、成長分野に力を注ごう」という思考に向かわせていると見られる。
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