三井住友銀行「年功序列の廃止」の真意 人事副部長が語る”20年間の変化”とは【前編】(2/4 ページ)
三井住友銀行が2026年1月をめどに、人事制度を抜本的に変更する方針を示した。その中でも「年功序列の廃止」が注目されている。この人事制度改革はなぜ、何を目的に実施されるのだろうか。
領域ごとに、求められる「強み」が異なってきた
河合: 銀行を利用するお客さんとして、今のお話をすごくシンプルに考えると、2001年時点の銀行さんはお金を貸してくれるところ、お金を預けるところで利子がたまることが業務だった。でも、今は銀行に預けて終わりじゃなく、例えばNISAだったり投資だったりをする。電子マネーも普及しお金との関わり方に変化が出てきた。
そういった環境の変化に対応するための人事制度改革なので、これまでの人事改革の延長線ではあるけども、延長と断言できるほど単純じゃない──と言う理解でよろしいですか。
北山: はい、大丈夫です。今回の人事改革では、ビジネスの領域に応じて評価や処遇もカスタマイズできるようにします。
今までは、全領域が「階層」という一つのフレームの中で評価されました。1学年400人いたら1から400番まで番号をつけるような感じですね。でも、これはおかしいですよね。だって、求められるものに、それぞれ違いが出てきているわけですから。
河合: 領域によっては、今まで通りの年次的な考え方がなじむ場合もあると思うのですが。
北山: その通りです。そこはこれまで通りの運用していけばいいと考えています。
実力中心の制度設計、評価の軸は?
河合: 人事制度が変わることによって、働く側にとって良い点、悪い点を具体的にご説明いただけますか。悪い面はなかなか言いたくないかもしれませんが(笑)。
北山: 良い面は、いろいろなところで発信している一方で、悪い面を見せていないと思われるのは人事のサガだと思ってます(笑)。各種報道にも書いてないことも、当然多々あります。でも、本当の実力本位を作り上げていきたいんですね。
キャリア採用や新卒採用、若手、中堅、シニアに関係なく「階層」というものをなくして、「役割等級」にすることは社員にとっても良いことだと信じています。
社員とって悪い面は制度施行の2026年までに、丁寧なコミュニケーションをする中で拾いあげ、より良い方向にまとめるつもりです。
河合: 「階層」がなくなり実力中心の制度設計になれば、社員が実力をつける教育が不可欠だと思います。
昭和の日本企業は社内教育を徹底していましたし、外資系の場合は、自分がやるって手を挙げれば、全面的にバックアップできる教育リソースを用意している。今回はどうなのでしょうか。能力ある人、実力ある人の「能力」や「実力」はどこから来るものなんですか。
北山: 評価の軸は「行動評価」と言われるものです。領域ごとに求められるものが変わってくるので、それに対するアウトプット、行動発揮が評価のベースになります。果たされれば、次の役割、あるいは次の役割等級のレベルに上がっていく機会をつくる。「自分はもっとこっちのキャリアをいきたい」といった、キャリアの領域をまたぐようなところは本人が手を挙げてチャレンジしていけるような枠組みにします。
河合: 求められるものに対してちゃんとアウトプットできるか、結果を出せるかどうかっていうところに尽きる、と。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
米Amazon、Googleも出社回帰 なぜ、わざわざ脱リモートするのか?
米Amazonがリモート勤務を原則廃止し、週5日出社に戻すと報道された。なぜ、リモートワークもできる世界的なIT企業がリアル出社に回帰しているのか。チームの生産性を向上させるには、どうしたらいいのだろうか。
「自分で考え、動ける社員」を作る──リコーは何をしているのか
「リコーは2020年にOAメーカーからデジタルサービスの会社になると宣言している」――リコーの長久良子CHROは、自社の人的資本戦略に変革が必要になった理由をこのように話す。リコーが2020年から進めてきた、自律的に考えて提案できる社員を育む人的資本戦略と、見えてきた課題感とはどのようなものか。
イオン「デジタル人材を2000人に」 どのように定義し、育てていくのか
イオンは「2025年までにデジタル人材を2000人にする」との目標を掲げている。デジタル人材の定義や育成方法を取材した。
「育休はなくす、その代わり……」 子なし社員への「不公平対策」が生んだ、予想外の結果
出生率が過去最低となり、東京都ではついに「1」を下回ったことが大きく話題になっています。結婚や出産を希望する人が、安心してその未来を選べるようにするために、企業ができることは何か。「育児休暇をあえてなくした企業」の事例をもとに、社員を疲弊させない経営戦略について考えます。
自ら“窓際社員”になる若者──「静かな退職」が増えるワケ
最近の若い人たちは、人生設計がしっかりしている。しかし、仕事のプライオリティは確実に下がっている──。そんな悩みを、リーダー職に就く方々から聞くことがよくあります。米国では「必要以上に一生懸命働くのをやめよう」という「静かな退職」が話題になりました。なぜ、このような現象が起きるのか、そしてマネジャー層はどのように対応すべきなのか。健康経営学者の河合薫氏が解説します。
