部下もあきれる「自己陶酔型リーダー」に共通する“話し方”:「キレイごとナシ」のマネジメント論(2/5 ページ)
部下たちは形だけ聞いているふりをするが、おそらく何も頭に入っていないだろう。
情報過多時代の落とし穴
人間の情報処理能力には明確な限界がある。1956年、プリンストン大学の心理学者ジョージ・ミラーは「マジックナンバー7±2」という概念を発表した。人間の短期記憶には一度に7つ前後(5〜9個)の情報しか保持できないという法則だ。
これはとても有名で、私もいろいろな書籍でこの概念について勉強した。
しかし実は、この数字すら楽観的すぎるという研究結果も出ているようだ。2001年、ミズーリ大学のネルソン・コーワン教授の再検証によれば、人間のワーキングメモリの実質的な容量は「4チャンク程度」(チャンクとは、バラバラの情報を意味のある塊にまとめたもの)が現実的な数字だという。
さらに衝撃的なのは、ミシガン大学のジョン・スウェラーの実験結果だ。情報の種類や難易度によっては、実質的な処理容量が「2程度」にとどまることが判明した。つまり難しい内容を伝える場合、人間は2つの新しい情報を処理するだけで精いっぱいなのだという。
「自己陶酔型リーダー」3つの特徴
このように、人間には認知限界というものが存在する。なのに、そんなことはお構いなしのリーダーがいる。このような「自己陶酔型リーダー」は次のような特徴がある。
過剰な専門用語の使用
中途半端に勉強して仕入れた専門用語を、相手の理解度を考慮せずに連発する。「アジャイル思考」「データドリブン」「オンボーディング」など、はやりのビジネス用語を使いたがる。しかもその言葉の定義が曖昧(あいまい)なまま話を展開するため、聞き手は話の筋を追えなくなる。
文脈を無視した情報の羅列
先日も研修会で講師を務めたある部長が、「少し横道にそれますが……」と言ってから「認知バイアス」について20分も話し続けた。確かに彼は多くの知識を持っていた。しかしテーマから外れた事柄を、参加者のニーズや理解度を考慮せず話す姿は痛々しかった。案の定、参加者は皆、うわの空で聞いていた。
データによる過剰な裏付け
「データに基づいた意思決定」は重要だ。しかし過剰にデータを提示しても逆効果になる。あるシンクタンクの地方大会に呼ばれたときも、調べた分析データを延々と話し続ける講師がいた。途中から周りの経営者たちは手元の資料を閉じ、スマホでメールのチェックを始めていた。
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