主体性を「気持ち」で論じる危うさ
主体性について話すとき、往々にして精神論に陥りがちである。
「もっと積極的に動け」
「当事者意識が足りない」
「自分で考えて行動しろ」
こうした言葉を投げかけても、部下は何をすればいいのか、具体的な行動指針が見えない。大事なことは、行動の結果を細かく見て、どこに課題があるかを明確にすることだ。
私はこれを「主体性の分解」と呼んでいる。
例えば、指示された資料作成が締め切りに間に合わなかった部下がいたとする。このとき「やる気がない」「責任感がない」と決めつけてはいけない。進め方が分からなかったのか、優先順位を誤っていたのか、それとも予期せぬ障害があったのか。
「何が原因で遅れたのか」
「次回から、どうすれば間に合うのか」
このように「行動の要素」に目を向け、分解して考えることが真の主体性を育てる第一歩だ。
「タスク管理」ができていれば、部下は自然と動く
タスク管理を徹底している部下ほど、上司からの指示を待たずに自ら動き出すようになる。
あるIT企業での事例だ。入社2年目のAさんは、週初めに自分の「やるべきことリスト」を作成し、上司と共有する習慣をつけていた。リストには「優先度」「期限」「進捗(しんちょく)状況」などが記されており、進め方で迷うことがあれば自ら相談を持ちかけていた。
その姿を見た上司は、「Aさんは主体性がある」と周囲に言っていた。
ところが、Aさん本人に話を聞くと、
「私は心配性なタイプなので、何でも確認しないと不安なんです。だからタスクを丁寧に管理しているだけで……」
と答えたのだ。
つまり、Aさんの「主体性」は「仕事をタスクに分解して管理する習慣」から生まれていたのである。
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