最短15分で配達 “大学生向け”の超高速配送、米Gopuffがヒットした2つの理由:グロービス経営大学院 TechMaRI 解説(1/3 ページ)
物流ラストワンマイルの自動化が注目を集めている。今回は消費者の利便性を向上させる可能性の一つである「超高速配送」に焦点を当て、その現状と今後の展望について考察する。
現代社会において、世界中で生産された製品が、近くの店舗や自宅で容易に手に入ることは当たり前になっている。
この利便性を支えるのが、高度に発達した物流網であり、中でも最寄りの物流拠点から受取人への配送を意味する「ラストワンマイル配送」は、ビジネスの進化が著しい。サプライチェーン全体の中で、ラストワンマイル配送は最終消費者である個人宅へのローカルデリバリーを手掛ける部分に該当する。
一方で、ラストワンマイル配送には多くの課題も存在する。日本の場合は、人材不足やアナログな作業が依然として残る現場DX、サステナビリティ対応の遅れなどだ。また、ECの拡大による小口配送の増加、即時需要の高まりが、物流の逼迫(ひっぱく)を加速させている。
ラストワンマイル配送に参入する企業は、主に以下の4つに分類できる。
- 配送プラットフォーム:ラストワンマイル配送を対象としたプラットフォームを運営する企業(例:Uber、United Parcel Service of America、Grab)。中でもフードデリバリー企業が近年大きく成長
- 超高速配送:食品、アルコール、医薬品、娯楽品など衝動買いや短時間配送の需要が高い取引を実現するサービスを運営する企業(例:Gopuff、Bolt、Getir)
- 自律配送:食品や飲料のECと定期購入を自動化するサービス、配送用自動運転車や配送ドロイドの開発、商業サービスを展開する企業(例:Nuro、Oxa、Coco)
- ドローン/eVTOL物流:ドローンやeVTOL(電動垂直離着陸機)のネットワークで高付加価値品や食品を迅速に配達する技術開発、商業サービスを展開する企業(例:Zipline、Wing、EHang)
本稿では、これらの分類の中でも、消費者の利便性を向上させる可能性の一つである「超高速配送」に焦点を当て、その現状と今後の展望について考察する。
「超高速配送」のカラクリ
「超高速配送」(Ultrafast Delivery、クイックコマース)という言葉は、日本では聞きなじみがないかもしれない。配送を強化したECで、配送のみを提供する配送プラットフォームとは異なり、自社で商品を仕入れて倉庫で保管し、顧客に配送する。
代表的なサービスとして米国やインドを中心に広まる「15分配送」では、注文から5分以内にピッキングと梱包を行い、10分以内に配送を完了させる。このスピード配送は、商品、倉庫、ドライバーの3つの仕組みで実現可能となる。
取り扱い商品
ECの王者Amazonのように多種多様の商品を扱うロングテール戦略では、商品が多いほど大規模な倉庫が必要でピッキングに時間がかかる。超高速配送では掲載商品を購入頻度の高い商品に絞り込む(ショートヘッド戦略)ことで、在庫管理やピッキングの効率化を図る。在庫管理や需要予測にAIを活用する企業も。
倉庫
郊外の大型倉庫ではなく、配送エリア内を網羅するようにダークストア(小規模の配送拠点)を多数分散して設置し、顧客とのラストワンマイルを短縮する。
ドライバー
マッチングの時間を削減するため、時給で拘束、あるいは直接雇用することで、ダークストアに常時スタンバイの状態を維持する。
コロナ禍で急増も、厳しい現状
このように、消費者からは見えにくいものの、超高速配送は配送プラットフォームに対して垂直統合モデルのECと言える。理論上は短時間配送が可能に見えるが、多数のダークストアの賃料や維持費、自動化への設備投資などコストは高い。一方で配送品は食料品や日用品が多いため利幅は小さい。また、競合との差別化が難しいため、多額のマーケティング費用も必要となる。
コロナ禍の影響が残る2021年には、過熱する即配ニーズを追い風に超高速配送企業が急増。2020年以降に設立された企業も多い。しかし、コロナ後には即配需要は縮小し、欧米の都市部では2022年に廃業や撤退が相次いだ。現在では、インドなどの一部地域で盛り上がりを見せている。
こうした状況の中で、米国でZ世代向けサービスとして生き残っているのがGopuff(ゴパフ)だ。超高速配送のパイオニアとして急成長し、コロナ禍で事業をグローバルに拡大。コロナ後のトレンド衰退の中、精度の高いターゲティングで現在もZ世代の支持を得ている。Gopuffのストーリーを見ていこう。
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