三菱UFJ銀行「社内ビジコン」が活況 「ただのアイデア大会になる」企業と何が違うのか(2/3 ページ)
「期待したほど応募が集まらない」「本気のアイデアが出てこない」「一度落選すると、翌年挑戦してくれない」――。新規事業創出の有効な手段として、「社内ビジネスコンテスト」を導入している企業は少なくないが、このような運営上の課題に直面するケースが多く見られるのが現状だ。今回は、そんな社内ビジコンを成功させている、三菱UFJ銀行の取り組みを紹介する。
社員をやる気にさせるには「ターゲティング」と「マーケティング」が重要に
参加者フォローアップを支援したGoodpatchの秋山氏が、「Relight」を紹介。まず秋山氏は、Relightプログラムの根幹にある問いを投げかけた。
「もしあなたが頑張って出したアイデアが落選したら、次の年もまた出そうと思えるでしょうか? 再挑戦しようと、もう一度前を向くための『場』や『つながり』が、あなたの周りにはあるでしょうか?」(秋山氏)
Relightは、単なる落選者フォローではなく、「もう一度前を向くため」の仕組みとして設計された、と秋山氏は続ける。
当時のSpark Xが抱えていた「落選者フォローのリソース・ノウハウ不足」「アイデアの解像度・言語化の壁」「応募者同士のつながり不足」という課題に対し、Goodpatchは3つの設計方針を立てた。
- 単発施策でなく、中長期的なフォローアップの土台づくり
- スキルを学ぶだけでなく、自走や実践の場
- 共感・応援しあえる仲間との関係づくり
目指したのは、「落選者を『挑戦者』として称えながら、スキルアップと仲間づくりの仕組みを整え、次年度にチャレンジする人(継続・新規)を増やす」こと。
そのためにまず行われたのが、「挑戦者の分析・ターゲティング」である。挑戦者の価値観や思考パターンを分析することで、「アイデアはあるが熱量が継続しづらい層」と「事業化への関心以上に自己成長を求める層」の2タイプに特に着目した。彼らのニーズや理想的なゴール状態、提供すべき価値を定義し、コンテンツ設計へとつなげていった。
さて、フォローアッププログラムを設計しても、挑戦者たちに参加してもらえなければ意味がない。そこで重要になるのが「社内マーケティング」の視点だと秋山氏は強調する。Goodpatchでは、社内ビジコンの文化醸成プロセスを「AISACS(アイザックス)」というモデルで概念化している。
Relightでは、特に前半の「AIS」、すなわち「なんか気になる」「行ってみたい」と思わせる魅力づくりに注力した。具体的には、ターゲット層に響くメッセージを込めたキービジュアルやノベルティの制作、落選直後のタイミングでのWeb招待状送付など、会社や事務局の本気度と再挑戦を応援する姿勢を「見える化」する工夫を凝らした。
「これらの例は、あくまで一例です。お金をかけなくても、『認められた実感』『つながり・承認』『挑戦の証が残る』といった点で工夫すれば、参加者が自然と『参加したほうが得だ』と感じられる仕組み作りは可能です」(秋山氏)
重要なのは、「落選しても挑戦自体が評価される」ことだ。その安心感が、“やってみよう”というマインドにつながっていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「それ効果あるの?」と言わせない! 三田製麺マーケターの“社内を納得させる”施策効果の可視化術
「SNSのフォロワー数は増えているのに、売り上げへの貢献が見えない」「オンライン施策と店舗集客の関係性が分からない」――。多くの広報・マーケティング担当者が、一度は直撃したことがある課題だろう。そんな中、つけ麺チェーン「三田製麺所」を運営するエムピーキッチンホールディングスは、SNSやWebを活用した認知拡大から、コアファンの育成、そして売り上げ貢献までを可視化する独自のロジックを確立した。
三井住友銀行が「FA制度」導入 年間「5000件」を超える人事異動はどう変わる?
三井住友銀行は2026年1月から、FA制度を導入する。プロ野球でおなじみのFA制度、三井住友銀行はどのように運用するのか。
窓際でゲームざんまい……働かない高給取り「ウィンドウズ2000」が存在するワケ
「ウィンドウズ2000」「働かない管理職」に注目が集まっている。本記事では、働かない管理職の実態と会社に与えるリスクについて解説する。
日本人はなぜこれほどまでに「学ばない」のか 背景にある7つのバイアス
学びの習慣があまりにも低い日本の就業者の心理をより詳細に分析すると、学びから遠ざかる「ラーニング・バイアス(偏った意識)」が7つ明らかになった。日本人はなぜこれほどまでに「学ばない」のか。
「プログラミング言語」は今後不要になるのか ソフトウェア開発者の業務、半分はAIで自動化可能に
言語生成AIが持つプログラミングコードの生成能力は驚異的なものです。ソフトウェア開発における生成AIの導入は、3つの形態に分けられます。
「管理職辞退」は悪いこと? 断る際に重要な2つのポイント
昨今「管理職になりたくない」「管理職にならない方がお得だ」――という意見が多く挙がっている。管理職にならず、現状のポジションを維持したいと考えているビジネスパーソンが増えているが、管理職登用を「辞退」するのは悪いことなのだろうか……?


