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なぜ、仕事ができない人ほど「コツ」を知りたがるのか?:「キレイごとナシ」のマネジメント論(3/7 ページ)
成果が出ない部下ほど「秘訣」や「コツ」に飛びつく――それはなぜか? 現場での20年超の支援経験から見えた理由を解説する。
営業目標達成の「秘訣」を求める前に
私は20年以上、企業の現場で目標達成の支援をしている。とくに営業組織の変革を手伝ってきた。そこでよく聞かれるのがこうだ。
「営業目標を絶対達成する秘訣を教えてください」
「トップセールスになるコツは何ですか」
確かに秘訣はある。私が見てきたトップセールスたちには、独特のテクニックがあった。
例えば、ある商社のトップセールスは、大型商談では絶対に前のめりにならない。むしろ引き気味に対応する。顧客が「ぜひお願いしたい」と言うまで、決して押さない。
あるIT企業のエースは、エレベーターでの見送り時に必ずこう言う。「今日はありがとうございました。ところで、お客さまの趣味は何でしたっけ?」この何気ない一言で、ビジネスから離れた人間関係を構築していく。
しかし、これらの秘訣をまねしても、ほとんどの営業は成果を出せない。なぜか?
それは基本ができていないからだ。私が現場で見る「できない営業」の実態はこうである。
- 顧客訪問の絶対量が少ない
- 準備不足で商談に臨んでいる
- フォローアップが雑で遅い
まず訪問量が圧倒的に少ない。週に2〜3件しか訪問しない営業が「秘訣」を聞いても無駄である。
次に準備不足だ。顧客のビジネスモデルや業界動向も知らない。競合他社の動きも把握していない。顧客のWebサイトすら見ていない。ChatGPTで5分調べただけで「準備した」と言い張る。
そしてフォローアップ。商談後のお礼メールは3日後。見積書の提出は1週間後。顧客から催促されてようやく動く。これでは信頼関係など築けるはずがない。
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