「後はやっとくね」が部下をつぶす――令和のマネジメントに潜む“やさしい絶望”:「キレイごとナシ」のマネジメント論(4/4 ページ)
フィードバックを途中で終える“優しすぎる上司”が、若手の成長機会を奪ってしまう実態に迫る。
フィードバックは完璧である必要はない
ここで重要なのは、上司のフィードバックが完璧である必要はないということだ。むしろ完璧なフィードバックなど存在しない。
上司はフィードバックのプロではない。だから最初から的確な指摘ができなくても仕方がない。大切なのは、部下と一緒に試行錯誤しながら、100%のあるべき姿に到達するまで諦めないことだ。
このプロセスこそが部下の成長につながる。何度もフィードバックを受けながら修正を重ねることで、部下は「あるべき姿」の基準を体得していく。
「なるほど、最初は分からなかったが、ここまで配慮して企画書を作らないといけないのか」「顧客の課題って、そこまで調べて明らかにしていくのか。さすが課長だ。とてもいい経験になった」
この経験なしに、一人前のビジネスパーソンにはなれない。
優秀な部下ほど最後まで指摘してほしいと思っている
実は優秀な部下ほど、この問題を敏感に察知している。彼らは最後の最後まで、上司が納得するまで指摘してほしいと考えているのだ。
ある外資系企業で働く営業マネジャーの話が印象的だ。彼の部下である若手営業は、提案書の修正を10回以上要求されても文句を言わなかった。それどころか
「もっと細かく指摘してください」
「本当にこれで完成ですか? 完成度の高い成果物を出したいです」
このように、自ら求めてきたのである。なぜか。その若手は「はやくプロフェッショナルとして認められたい」という強い意欲を持っていたからだ。
「後はこちらでやるから」という上司の言葉は、部下にとって優しさではない。むしろ「部下育成に責任を持たない」という宣言に聞こえるのだ。優秀な部下はこの姿勢を見抜き、「この上司の下では成長できない」と判断する。
まとめ
「言い方」「接し方」は配慮すべきだ。しかし仕事を依頼した以上は、最後まで責任を持つ姿勢が上司には求められている。
あるべき姿に達するまで部下にフィードバックを続けることだ。それが真の部下育成である。妥協や諦めは、一見すると優しさに見えるが、実際は部下の可能性をつぶす行為だと考えよう。
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