「残業キャンセル界隈」名乗る若者が増加中…… 上司はどう向き合うべき?:「キレイごとナシ」のマネジメント論(3/4 ページ)
SNS発の「○○キャンセル界隈」が職場にも広がり、「残業キャンセル界隈」を名乗る若手が増えている。背景には働き方改革の誤解や成果への無関心がある。組織の生産性低下を防ぐには?
なぜ若者は「残業キャンセル」を選ぶのか
では、なぜ若者は「残業キャンセル界隈」を名乗るのか。その背景には3つの要因があるだろう。
- 働き方改革の誤解
- 成果への無関心
- SNSでの承認欲求
まず「働き方改革の誤解」についてだ。近年、政府や企業が残業削減を推進しており、その流れに乗っかっているものと思われる。若者の一部は「残業=悪」と単純化して理解している者もいるという。
仕事が終わる、終わらないは関係がない。定時で帰ることこそが正義――。このような極端な解釈も広まっているようだ。本来は生産性を上げて残業を減らすべきなのに、生産性はそのままで残業だけキャンセルしようとする。
次に「成果への無関心」である。成果や目標達成への意識が希薄な若者が増えた。「静かな退職」という表現が普及するように、最低限の仕事をして給料をもらえればそれでいい。このような価値観が広がっている。
成果にコミットせず、自分のペースで仕事をこなし、定時になったら帰る。「残業キャンセル界隈」の人だからだ。これでは成長もしないから、いつまでたっても生産性の高い仕事ができないだろう。
最後に「SNSでの承認欲求」だ。ノリで「残業キャンセル界隈」を名乗ることで仲間が見つかる。同じ価値観の人から「いいね」がもらえる。この承認が行動を強化していく。
「今日も残業キャンセル成功!」とSNSに投稿すれば、「お疲れさま!」「私も帰ります!」とコメントが集まる。この連帯感が心地よいのだ。
しかしこの行動には大きな問題がある。誰かが必ずその「ツケ」を払うことになる、ということだ。上司や同僚に負担がかかれば、顧客への対応が遅れる。組織全体の生産性が低下する。これは、アダム・グラントの世界的名著『GIVE&TAKE』で表現されたテイカー(奪う人)的な行動だ。このようなテイカーは、人生で成功することはない。
「残業キャンセル」がもたらす3つの弊害
「残業キャンセル界隈」の人が増えれば、組織に深刻な影響を与えるだろう。
- チームワークの崩壊
- スキル向上の機会損失
- 信頼関係の破綻
まずチームワークが崩壊する。一人が仕事を放棄すれば他のメンバーが補う。この不公平感が積み重なる。やがて協力関係が成り立たなくなる。
次にスキル向上の機会を失う。新しい仕事にチャレンジしない。難しい課題から逃げる。このような姿勢が続けば、当人が成長できない。将来のキャリアにも影響するだろう。
そして信頼関係が破綻する。約束を守らない。締切を守らない。このような人は信頼されない。信頼とは、信じて頼るという意味だ。「頼りにならない信用できない人」とレッテルを貼られ、重要な仕事を任せてもらえなくなるはずだ。
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