出社は“信仰”? 若手が始めた「コーヒーバッジング」という抵抗:「キレイごとナシ」のマネジメント論(2/4 ページ)
成果を出しても「顔が見えない」と信用されない。米国で広がる“コーヒーバッジング”は、若手社員の静かな抗議だ。出社回帰の圧力に揺れる組織で、管理者が直視すべき本質とは何か。
「コーヒーバッジング」とは何か?
コーヒーバッジング(Coffee Badging)とは、出社義務を形式的に満たすための行為のようだ。出社が義務化された環境で一部の従業員が出勤記録を打って(バッジング)、コーヒーを飲む程度の短時間でオフィスを離れる働き方である。最低限の滞在時間で出社実績を作る“皮肉めいた行為”と言えよう。
米国のWeb会議システムを提供する企業オウル・ラボ(Owl Labs)が提起した概念のようだ。その後、IT企業やメディア業界の都市部で話題になり、主要メディアが相次いで取り上げて広まった。
日本でも2023年頃から人事関連の記事で紹介されるようになった。コクヨの「働き方用語辞典」では「規則のために顔を出し、短時間で帰宅して在宅勤務を続ける現象」として定義されている。
実際に、あるIT企業では、新入社員から3年目までの6人が申し合わせて、このコーヒーバッジング」を取り入れた。彼らは毎朝9時にオフィスに出社し、社員証をスキャンしてコーヒーを飲む。30分程度の滞在後、「外回り」や「客先訪問」を理由に退社し、自宅で業務を継続するのだ。
なぜ若者は「コーヒーバッジング」を選ぶのか?
この背景には、出社回帰への圧力と、若者の価値観のギャップがあるだろう。管理者側は「顔の見える場所で働いてほしい」と考える。一方若者は「効率のいい環境で働きたい」と主張する。
前述の6人が実践した理由は明確だった。
「在宅ワークでも効率的に仕事をしているのに、『見えないところで何をしているか分からない』と勝手に思い込まれている」
これが彼らの言い分である。実際、プロセス指標は適切に管理され、成果も出していた。にもかかわらず、管理者たちはそれらの数字をろくに見ることなく「オフィスで顔を見ない不安」を優先した。
このような状況で、彼らは口をそろえてこう言った。
「この抵抗運動が実らなかったら、転職するつもりです」
表面的な評価に対する憤りも大きい。
「顔を出すことでしか評価されないなら、私たちへの評価も公正ではないはず」
組織で決めたはずの「プロセス指標」にも、目を配らず、ただ「出社しろ」と指示するだけなら、かれらの言い分は理解できるだろう。
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