トップ営業が“最悪の上司”になる日 チーム崩壊を招いた3つの過ち:「キレイごとナシ」のマネジメント論(2/5 ページ)
営業トップがマネジャー昇進後、3カ月でチームが崩壊――原因は、右脳派・左脳派の思考差を無視した“論理偏重マネジメント”だった。数字では測れない人間の特性を、どう生かすか。
右脳派・左脳派とは何か
あなたは右脳派? それとも左脳派?
そんな風に問いかけられたことはないだろうか? 人間の脳は右半球と左半球に分かれている。それぞれが異なる機能を担っているという話だ。
右脳は直感や創造性、感情をつかさどり、芸術的センスやひらめきが得意といわれ、左脳は論理や言語、分析を担当。計画的で数字に強い傾向があるといわれている。ただしこれは脳機能を簡略化した説明であり、どこまでうのみにしていいか分からない。実際の脳は両半球が連携して働くようだ。
とはいえ人によって、どちらの傾向が強いかは確かに存在する。
会議での発言を例に観察してみよう。右脳派は「なんとなくいい感じ」と感覚的に話すのに対して、左脳派は「データから見ると」と根拠を示して話す。この違いを理解すると、マネジメントはやりやすくなるだろう。
崩壊したチームの悲劇的なエピソード
ある大手IT企業で実際に起きた事例がある。
32歳の新任マネジャーは営業成績が常にトップクラスだった。論理的思考が得意で、数字管理は完璧。典型的な左脳派だった。
彼のチームには8人のメンバーがいた。デザイナー2人、エンジニア3人、営業3人という構成だ。新任マネジャーは自分の成功体験をもとに全員に同じ指導をした。
「まず数値目標を明確にしよう」
「進ちょくは必ず数字で報告してくれ」
「感覚ではなく、評価もすべて定量的に判断する」
エンジニアたちはさほど違和感なく受け止めた。しかしデザイナーの大半は困惑した。
「デザインの良し悪しを数字で表現できません」
「インスピレーションが大切なんです」
その言い分に、新任マネジャーは理解を示さない。「それでは評価できない」と一蹴したのだ。
とりわけ問題になったのは時間管理(タイムマネジメント)である。クリエイティブな仕事にも厳格な時間制限を設けた。
「長時間考えていてもいいアイデアは出てこない。1時間かけて出ないアイデアは、1週間かけても出てこない」
と言い切った。
論理的には正しいかもしれない。しかしこの発言に拒絶反応を示したメンバーは多かった。デザイナーだけではない。営業メンバーも「顧客対応に、あまり時間をかけるな」と言われて反発した。
「顧客との信頼関係は、時間では測れない」
「雑談から生まれる商機もある」
営業チームも分裂した。データ分析が得意なメンバーは歓迎した。しかし顧客との関係構築を重視するメンバーは強い抵抗を示した。
結果は惨憺(さんたん)たるものだった。3カ月で2人が退職。さらに3人が異動希望を出した。チームの生産性は40%低下。顧客からのクレームも増加した。
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