生成AI時代、SFAは“用済み”なのか 現場のマネジャーが考えるべきこと:「キレイごとナシ」のマネジメント論(2/5 ページ)
便利だが、入力項目が多すぎるのだ。商談のたびにデータを入れるのが面倒で結局放置される。どうすればいいのか。
SFA/CRMが抱える20年来の課題
SFAやCRMには、導入当初から変わらない致命的な課題がある。それは「手入力の負担」だ。
私は20年以上、営業コンサルタントとして現場に入り、数多くのSFA導入プロジェクトに関わってきた。しかし、この問題は一向に解決されていない。
営業担当者は商談のたびに、名刺交換のたびに、その情報を自分でシステムに入力しなければならない。名刺スキャンやOCR技術、音声入力が進化しても、この“面倒くささ”は本質的に変わらない。
情シスは「たかが2〜3分じゃないですか。交通費精算と同じ感覚でお願いします」と営業に嘆願するが、それで納得するような営業パーソンはほとんどいない。
結果として何が起こるか?
- 入力が滞り、データが古くなる
- 営業メンバーが「報告のためのツール」と認識する
- マネジャーも部下に入力を強要することに疲弊する
SFA/CRM導入企業の失敗率は、今でも30〜50%に達するという統計がある。売上増加や生産性向上を実現できる企業は一部に過ぎない。多くの企業では、高額な導入・維持コストだけが重荷になっているのだ。
PDCAサイクルよりも「OODAループ」
私が支援先で営業マネジャーたちと話すとき、必ず耳にする言葉がある。
「SFAに入力する時間があったら、もっと商談したい」
「会議でデータを見ても、現場では役に立たない」
都合のいい話だが、現場のマネジャーたちは、アウトプットだけを求めている。
インプットは、したくないのだ。自分がデータを入力したくないし、部下たちにも強要したくない。たとえ入力デバイスがキーボードから音声入力に変わったとしても、この本質は変わらない。
営業活動は想定外の連続だからである。スポーツと同じで、現場で目まぐるしく変わる状況を見て判断すべき仕事だ。戦場と同じである。だからPDCAサイクルよりも、OODAループ(Observe:観察、Orient:状況判断、Decide:意思決定、Act:行動の頭文字。PDCAより素早い意思決定サイクル)を回すべきなのだ。
会議室でSFAが出すデータを見て納得しても、現場でその通りに動くかどうかは別問題だ。毎日何件も商談しているのに、会議でフィードバックされたことなど覚えていられない。理屈では分かっても、問題は現場で起こっているため、心情的に受け入れられないのである。
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