2015年7月27日以前の記事
検索
連載

「30万円以上の初任給? そんなのムリ!」嘆く中小企業の人事部長 どこまで続く“賃上げ格差”「キレイごとナシ」のマネジメント論(3/5 ページ)

広がりゆく大手と中小の「賃上げ格差」。採用に悩む中小企業はどうすればよいのか。データをもとに解説する。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

「賃上げ格差」の正体とは何か

 この人事部長の悩みは、単純な金額の差だけではない。ベースとなる給与水準だけでなく、賃上げ率も違う。その結果、格差は縮まるどころか広がる一方なのだ。

 例えば初任給22万円の企業が3%賃上げしても、上がるのは6600円だ。その間に初任給30万円の大手企業が5%賃上げすれば、1万5000円上がることになる。これが「賃上げ格差」の実態だ。

 「新卒採用の説明会を開いても、学生の反応が年々薄くなっている。大手の初任給が上がるたびに、うちへの関心は下がっていく。技術を磨ける環境も、働きやすさも自信があるのに……」

 人事部長の悩みは深い。そして、この悩みは決して珍しくない。

中小企業の8割超が「大企業の賃上げ」に影響を受けている

 人材育成事業を手がけるCRAYONZ(東京都港区)が2024年8月に実施した調査がある。対象は20〜60代の中小企業経営者574人だ。

 「人材の確保・定着に課題があるか」という問いに対し、53.4%が「はい」と回答した。中小企業の半数以上が、人材確保に苦しんでいるのだ。

 さらに深刻なデータがある。人材確保に課題があると答えた経営者に、大企業の賃上げが自社に与える影響を聞いた。

 「非常に影響がある」が37.2%、「ある程度影響がある」が46.4%。合わせて80%を超える経営者が、大企業の賃上げの影響を実感していたのである。

 また、以下のような声も上がっている。

  1. 採用応募者の数が集まりにくくなった(46.5%)
  2. より良い条件を求めた離職・転職の増加(23.8%)
  3. 社内に不満が生まれ士気が低下している(12.9%)

 この結果から見えてくるのは、賃上げ格差が「採用」と「離職」の両面から中小企業を圧迫しているという事実だ。新しい人材が入ってこない、既存の社員も流出する。この二重苦が、中小企業を追い詰めているのである。

 当然、将来への危機感も強い。「賃上げ格差が拡大した場合、人材流出にどの程度危機感を抱いているか」という問いに対し、「非常に強い危機感がある」が38.2%、「ある程度の危機感がある」が45.7%と、合わせて約85%が危機感を持っていることが分かった。

 採用が難しくなり、既存社員も流出する。賃上げ格差は、中小企業の存続そのものを脅かしつつあるのだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る