“静かな解雇”を生む「AI格差」 部下を捨て、AIを選ぶ日が来る?:「キレイごとナシ」のマネジメント論(3/5 ページ)
ある中堅企業の部長は、つい半年前まで人手不足に頭を悩ませていた。ところが今、悩みの種は別のところにある。
「静かな解雇」が進む3つのパターン
AIエージェント時代において、「静かな解雇」は以下の3つの形で進行する。
- 役割の空洞化
- データによる選別
- 配置転換による自主退職の誘導
まず(1)の「役割の空洞化」について解説しよう。
AIが高度な認知タスクを担うようになると、人間の仕事は二極化する。「AIの指揮者」になるか、「AIができない業務」を担当するかだ。
AIを活用して生産性を上げる人材は「AIオーケストレーター」と呼ばれる。彼らは複数のAIエージェントを使いこなし、成果を最大化する。
一方、AIを活用できない人材はどうなるか。
仕事の中身を抜かれてしまう。重要なプロジェクトはAIを使えるチームに回され、そうでない人は単調な作業だけが残る。これが「役割の空洞化」だ。上司の悪意がなくても、「静かな解雇」は進行してしまうだろう。
次に(2)の「データによる選別」だ。
企業は今、AIを使って従業員のパフォーマンスを詳細に分析している。生産性、成果物の質、業務スピード。あらゆる指標が数値化される時代だ。もしあなたの成果がAIエージェントのコストパフォーマンスを下回るなら、評価は厳しくなる。
「あの人、最近パフォーマンスが落ちてるよね」
そんな噂が立つ前に、データが冷徹に判定を下すのだ。
最後に(3)の「配置転換による自主退職の誘導」である。
これは「静かな削減(Quiet Cutting)」とも呼ばれる。解雇の代わりに、より価値の低い役割へ配置転換し、自主退職を促す手法だ。
給与は下がる。やりがいも失われる。しかし、会社から「辞めてくれ」とは言われない。
「このポジションのほうが、君に合っていると思う」
そんな言葉とともに、静かに追い込まれていくのだ。
これら3つのパターンに共通するのは、上司が意図しなくても起こりうるという点である。システマチックに、そして残酷に進行する。だからこそ厄介なのだ。
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