預金3000万円でプラチナカード無料 三菱UFJ「50兆円の富裕層囲い込み」に透ける焦り(3/5 ページ)
三菱UFJ銀行が預かり資産3000万円以上の顧客を対象に、年会費無料のプラチナカードを提供する新会員組織を発表した。対象は顧客の2%ながら、個人預金の半分にあたる50兆円を占める層だ。「金利のある世界」の復活で預金の収益性が高まる中、一見攻めに見える大盤振る舞いの真の狙いは、親の世代交代に伴いネット銀行へ流れ出す「50兆円の相続流出」の防衛だ。メガバンク首位が仕掛けるLTV重視の防衛戦略の裏側に迫る。
なぜ「数万円の年会費」をタダにできる? 預金が利ざやを生む時代の計算
「一般にプラチナカードは年会費が数万円から10万円を超える。無料になるケースもあるが、いろいろな利用条件をクリアしなければいけない」。そう話すのは三菱UFJニコス社長の角田典彦氏だ。
エムット Excellent Club カードに条件はない。会員であること、それだけだ。年会費を取らないカードはどこで採算を取るのか。記者の問いに角田氏は「カード事業単体での採算ではなく、エムット Excellent Club全体、MUFG全体で事業採算が取れる仕組み」と答えた。山本氏も、事業本部はLTV(顧客一人から生涯に得られる収益)で顧客収益を測っているとし「カードを起点に預金口座が取れて投資をしていただく、この大きなLTVの中で考えている」と補足した。
なぜグループ全体なら採算が合うのか。金利が戻ったからだ。MUFGの2025年度決算では、円金利上昇の影響だけで営業純益が約1500億円増えた。2026年度はさらに1700億円の押し上げを見込む。山本氏が率いるリテール・デジタル事業本部の預金残高は83兆円。金利がなかった時代、預金を集めても貸出や運用で利ざやを稼ぎにくかった。金利が戻れば、同じ預金が低コストの調達原資となり、貸出や運用から得る収益を支える。
山本氏は「圧倒的なストックを維持拡大していくことが、MUFGの勝ち筋になる」と言う。ストックとは、収益の土台に戻った預金のことだ。3000万円を預ける顧客に年会費相当を還元しても、その預金を原資に稼ぐ利ざやと、他行やネット銀行に持ち出されない価値のほうが大きい。カードは決済商品ではなく、預金の維持費として設計されているというわけだ。
残高に応じた優遇自体は他行にもある。三井住友銀行のOliveも、銀行預金とSBI証券の残高を合算した「Olive残高」でカードの年会費を無料にしたりアドバイザー相談などの特典を判定したりする。MUFGが「本邦初」とするのは、カードの還元率そのものを残高で動かす点だ。優遇を、誰にでも見える形で預金額に比例させたことになる。
会場にはカードの実物が展示されていた。至極色(しごくいろ)と呼ぶ濃い紫を基調にした縦型で、角田氏は「冠位十二階で最上位とされた色」と説明した。特典は還元率だけではない。特定のスーパーやコンビニで最大20%のポイント還元、クレカ積立で最大7%還元に加え、アメックスと提携した高級ホテルのアーリーチェックインや朝食サービス、空港送迎、レンタカーの車種アップグレードなども付く。ただ、残高ごとの還元率の刻みなど詳細は発表会では示されず、2027年度上期の発行までに明らかになる。
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