預金3000万円でプラチナカード無料 三菱UFJ「50兆円の富裕層囲い込み」に透ける焦り(4/5 ページ)
三菱UFJ銀行が預かり資産3000万円以上の顧客を対象に、年会費無料のプラチナカードを提供する新会員組織を発表した。対象は顧客の2%ながら、個人預金の半分にあたる50兆円を占める層だ。「金利のある世界」の復活で預金の収益性が高まる中、一見攻めに見える大盤振る舞いの真の狙いは、親の世代交代に伴いネット銀行へ流れ出す「50兆円の相続流出」の防衛だ。メガバンク首位が仕掛けるLTV重視の防衛戦略の裏側に迫る。
狙いは「相続で流出する預金」 50兆円を守り抜くデジタル戦略
なぜ2%の顧客をここまで優遇するのか。質疑応答で山本氏はこう切り出した。「私たちは今、ストックは民間銀行で圧倒的にトップだ。ただ大きな課題として、相続の時に資金が流出しがちになってきている」
これまで相続は「圧倒的に入超」だったという。地方銀行に預けていた親の資産が、都市部に出た子の相続でMUFGに集まる構図だ。「今度は逆に、私たちからネット銀行に流れる傾向がかなり強くなってきている。まだ出るほうが多いとはなっていないが、ネット銀行への流出にかなり危機感を覚えている」
流出の仕組みも具体的だった。「相続手続きでほとんどの皆さんが疲れ切っていて、当行の口座を作ってくださいと言っても面倒くさくて作らない。自分の持っているネット銀行に送金してくださいとなってしまう」。逆に、相続人がすでにMUFGに口座を持っていれば「なかなか抜けない」。口座の有無が、相続時の資金の行き先を決めているという。
打ち手は2つだと山本氏は言う。一つは2027年に開業するデジタルバンクで若年層を獲得すること。もう一つが「堅い」ほうで、50兆円を預ける中高年の「ファン」に、生前から子へ「相続のサービスを使うから三菱UFJの口座を作っておけ」と言ってもらうことだ。「これは非常に大きいマーケティングだと思っている」
同時発表の「エムットそうぞく」は、この2つ目の打ち手を形にしたサービスである。中核の「もしもの口座バトン」は、三菱UFJ銀行に預けた資産について、相続時に受け取る家族と割合を、生前に指定しておく仕組み。電子署名と本人への確認電話で契約でき、来店不要、手数料無料、金額の開示も要らない。相続発生後は遺産分割協議(相続人全員で分け方を決める話し合い)を経ずに受け取り手続きに進めるため、通常3カ月程度かかる受け取りが最短1カ月程度に縮まるという。
受取人となる家族は三菱UFJ銀行に口座を持ち、電子的にやりとりする。「対象は同行の預金に限られ、それ以外の財産には別途、遺産分割協議が要る」(MUFG常務執行役員の旦一哉氏)。会員本人が亡くなっても、家族が一定期間は会員資格を保てる「承継機能」も、狙いは同じだ。
山本氏によると、以前は業態ごとにサービスが分かれ「こういうサービスができなかった」。本部機能を業態横断で再編し、横串で企画するようになったことで、銀行のカード、信託の相続商品、証券の運用相談を一つの会員組織に束ねられるようになった。信託銀行が運営してきた別のエクセレント倶楽部も「シニア版」(仮称)として新組織に統合する。
相続の入り口を自前で押さえる姿勢は、業界の動きと比べると対照的でもある。4月には野村ホールディングスや三井住友フィナンシャルグループ、NTTデータなどが、相続手続きを一元化するプラットフォーム「みらいたすく」の構築に向けて基本合意した。
参加社には三菱UFJ信託銀行と三菱UFJモルガン・スタンレー証券が名を連ねる一方、三菱UFJ銀行の名はない。相続人が最初に手続きする窓口を他社と共有するか、自前で持つか。MUFGの銀行は、少なくとも当面は自前で進む形になる。
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